鉄道架線案内1

ここでは電車の鉄道架線をご紹介いたします。



1、直接吊架


(写真・都電荒川線)
電車の屋根にはパンタグラフと言う、
電気を取り入れる装置(集電装置)があるのですが、
そのパンタグラフと接する電線をトロリー線と言います。
直接吊架は、橋渡しに渡された線(スパンビーム線)に止め金具を付け、
直接トロリー線を取り付ける方式を言います。
直接吊架線はシンプルな構成で、設置も簡単なのが利点ですが、
弾力性に乏しいので、高速運転には不向きです(時速50KMが限界)。
そのため、専ら路面電車に使われています。
関東では都電荒川線、東急世田谷線、銚子電気鉄道などに見られる方式です。

2、シンプルカテナリー


(写真・京成千葉線)
直接吊架では弾力性に乏しいので、
一般鉄道ではカテナリー方式を使うのが殆どです。
カテナリー方式とは、吊架線からハンガーでトロリー線を吊るす方式で、
シンプルカテナリーは、吊架線もトロリー線も1線構成の一番簡単な方式です。
ハンガーとトロリー線は、イヤーと呼ばれる洗濯ばさみのようなもので、
架線の上部のくぼみを挟む形で接続されています。
関東の殆どの電化路線で見ることが出来る方式です。
なお、最近は、トロリー線を太く丈夫にした、
ヘビーシンプルカテナリーが登場しています。

3、ツインシンプルカテナリー(ダブルシンプルカテナリー)


(写真・相鉄本線)
ツインシンプルカテナリーは、電車の本数の多い区間や、
急勾配などで多くの電気を必要とする区間に使われる方式で、
構成はシンプルカテナリーを2つ並べた形になっています。
この方式は電圧降下を防止し、
安定した電力供給ができるという利点を持っています。
しかし、その一方で設置コストも保守コストもかかると言う欠点もあります。
最近はシンプルカテナリーが改良され、ツインシンプルカテナリーにしなくても、
安定供給ができるようになったので、徐々にこの方式は減ってきています。
現に西武、京急、東急は、ツインシンプルカテナリーから、
ヘビーシンプルカテナリーにする工事をやっていて
だんだんとツインシンプルカテナリーは見られなくなってきています。
今関東では、JRの一部路線、京王電鉄、
小田急電鉄、東京急行電鉄、相模鉄道で見られます。

4、合成シンプルカテナリー


(写真・京急本線)
構造はシンプルカテナリーなのですが、
ビーム周辺のハンガーに合成素子を取り付け、
トロリー線の揺れを安定化させています。
京浜急行電鉄でかなり見られる方式です。

5、コンパウンドカテナリー


(写真・相鉄本線)
従来のシンプルカテナリーより、弾力性を向上させ、
安定感をもたらせたもので、高速運転に向いている方式です。
吊架線からドロッパで補助吊架線を吊り、
更に補助吊架線からハンガーでトロリー線を吊ると言う、
ダブル構造になっています。
関西ではJR、大手民鉄ともどもかなり見られる方式ですが、
関東では採用区間が少なく、
新幹線(JR長野新幹線や都心部区間は除く)、JRの(御徒町〜熱海(来宮)間)
JR横須賀線(大船〜横須賀間)、JR埼京線(赤羽〜大宮間)と、
相模鉄道(平沼橋〜西横浜間・希望ヶ丘駅周辺・いずみ中央〜湘南台間)でしか見られません。

6、コンパウンドカテナリー(セミタイプ)


(写真・横浜高速鉄道みなとみらい線)
東急系の会社(東急及び京王・小田急・横浜高速等)の地下区間でよく使われる方式で、
コンパウンドカテナリーの縦断面を小さくした方式です。
地下区間で使われる剛体架線より弾力性がすぐれているので、
高速運転が可能なだけでなく、
シンプルカテナリー並みの縦断面で、
シンプルカテナリー以上のトロリー線の安定を得られると言う利点を持っています。
地下区間では、吊架線とき電線が一緒になっているタイプが一般的ですが、
地上区間(東急目黒線など)は、吊架線とき電線は別になっていることが多いです。
かつてはセミコンパウンドカテナリーと分類していたのですが、
今はこれもコンパウンドカテナリーにしているようです。

7、き電吊架線方式シンプルカテナリー
(フィーダメッセンジャー方式シンプルカテナリー)


(写真・東武日光線)
今流行のインテグレート架線で使われまくっている方式です。
今まで別々に存在していたき電線と吊架線を一緒にしたき電吊架線で、
トロリー線を吊っています。
従来のシンプルカテナリーより線が1線減るので、
設置コストが大幅に削減でき、通常の保守はかなり省力化できると言う利点があります。
また、架線の見た目もすっきりして景観面でもすぐれています。
欠点は、交換コストがシンプルカテナリーよりかかるということがあげられます。
最近の改良した区間や新線、JRの都心部区間ではかなり採用されています。

8、剛体吊架式(剛体架線/鋼体架線)


(写真・東葉高速鉄道)
架線を剛体にし、架線の縦断面を小さくしたものです。
弾力性には乏しく高速運転には不向きなだけでなく、
パンタグラフの離線率が高いという欠点を持っていましたが、
最近はパンタグラフの改良で、欠点を克服しています。
架線断面が小さいので、地下区間ではトンネルの断面を小さくすることが可能です。
形状はT型の剛体下部にトロリー線を取り付けた方式です。
T型剛体はき電線もかねていて、別にき電線を配する必要はないのが利点です。


シンプルカテナリーから剛体架線に切り替わる区間。
ホームからこの区間が見られるのは、
関東では東葉高速鉄道船橋日大前駅と小田急線東北沢駅だけです。
シンプルカテナリーは直接吊架のように切り替わり、
横に剛体架線が平行し、シンプルカテナリーは終わります。
その後、き電線がT型鋼体に引き込まれて完全に切り替え完了です。

9、第三軌条式


(写真・東京メトロ銀座線)
線路の横に敷かれた第三軌条から集電する方式です。
車両の台車に取り付けられた集電靴(しゅうでんか)から集電します。
トンネルの断面を小さく出来るので、
地下鉄でよく採用される方式です。
欠点は、プラス電気の第三軌条と、マイナス電気のレール(帰線)が近いことで、
感電防止から高電圧に出来ないことです。
余談ですが、レールボンドとは、レールのつなぎ目のところにあり、
帰線(マイナス電気)の電気を流すために、
つなぎ目両側のレールを結ぶ電線のことです。

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