電車の運行工程って何!?その1
列車は好きな時に勝手に運転されているわけでなく、
運行工程が決められていて、
それに従って運転されています。
その運行工程にルーズな国の鉄道もありますが、
日本の鉄道はトラブルがない限り、厳密に守られています。
これは、日本国民が時刻に対してシビアな性格で、
少しでも列車が遅れると乗客の暴動が起きる可能性があるからです。
(例として高崎線の上尾事件など。)
1、運行工程
そもそも「運行工程」と言う言い方はなじみがなく、
一般的には「鉄道ダイヤ(ア)グラム(略してダイヤ)」と言われています。
なお、日本では一般的に列車の時刻自体を「ダイヤ」と言っています。
鉄道ダイヤグラムは一般的に下図のように、
縦軸に距離、横軸に時刻(10秒単位が基本)となったグラフで表示されます。
また、そのグラフで示された列車の運行の線を「スジ」と言います。
このグラフはイギリスのウォルター・F・ページと言う鉄道技師が使っていたもので、
日本の鉄道技師がそのグラフを(こっそりと、かつ無断で)書き写したことにより、
一般的に使われるようになりました。
そのため、日本以外の国では必ずしも鉄道ダイヤグラムを使っているとは限りません。
ここで気を付けたいのは、この図がトランプのダイアモンドのような線の交差になるので、
「ダイヤ(ア)」と付けられている訳ではなく、
また、グラフをグラムと誤字った訳でもありません。
ダイヤグラムを英語で書くと、
「diagram((dia=わたって+graphy=書く+ma)=線で書いたもの=図)」で、
その単語自体で「図、グラフ、予定表」と言う意味があります。
なお、鉄道ダイヤグラムを書き換えることを「ダイヤ改正」と言いますが、
若干の書き換えは「ダイヤ修正」、
今までのダイヤを全く使わず、
新しくダイヤを作り直すことを「白紙ダイヤ改正」と言います。
1−2、暫定ダイヤ改正
想定外の天災などが起こり通常運転が当面困難になった場合に、
暫定的にダイヤ改正をすることがあります。
大抵は、増発でなく、運転取りやめなどの減便になることが多いです。
例として、東日本大震災による福島原発事故で、電力供給不足になり、
通常運転が困難になった時に行った「節電ダイヤ」や、
新型コロナウイルス流行時におうち時間が増え、
不要不急な外出が減った時に、
ラッシュ時や深夜の本数を減便するダイヤ改正がそれにあたります。
大抵はそれらが収束した場合、元に戻すのですが、
一部の鉄道会社はそれに乗じて減便固定にする場合があります。
(西〇新〇線は10年以上経った今でも未だに節電ダイヤのまま・・・。)
2、曜日別ダイヤ
基本的にダイヤは
平日ダイヤ、土休日ダイヤ、土曜ダイヤ、休日ダイヤ、全日ダイヤがあります。
平日は通勤通学客が多数を占めていて、
朝は都心方向、夕以降は郊外方向に混雑するのが一般的で、
日中は比較的空いています。
そのため、平日ダイヤは朝の上りや夕以降の下りを
集中的に列車を走らせるダイヤになっています。
また、ちょっと一杯飲んで遅くなったサラリーマン、
残業で遅くまで残ったサラリーマン用に、
終電を遅くしているのも特徴です。
土曜ダイヤは沿線に学校が多い場合に設けるダイヤで、
半日あがりとは言え、沿線に学校が多いと通学客で混むので、
朝と昼に列車を集中する路線もあります。
しかし、大抵の通勤路線は土休日ダイヤにして、
土曜および、日曜、祭日、年末年始は同じダイヤにするのが一般的です。
休日ダイヤは基本的にショッピング客や観光客が乗り出すピークに列車を多くしています。
休日ダイヤは8時台後半から本数を増やして、
ディタイムは同じ本数が維持されます。
そして、18時台ごろからは随時減らしていきます。
次の日が平日の場合、早く睡眠をとるため早く帰るので、
遅い終電は設定されていません。
一般的にダイヤの本数は以下の図ような傾向になる路線が多いです。
一方、全日ダイヤは曜日に関係なく同じダイヤで運行される路線で、
利用客の少ないローカル線ではダイヤ設定のコストを下げるため、
全日ダイヤで組むことが多いです。
3、種別
列車は停車駅に応じて種別と言うものが設定されています。
列車に使われる種別は4種類で、
停車駅の少ない方から、
急行、快速、準急(準急行)、各駅停車(または普通)とされていますが、
鉄道会社や路線によっては諸事情により、
その序列が入れ替わっている場合があります。
なお、各駅停車(略して各停)は原則すべての駅に停車する種別で、
ダイヤ作成上のベースとなっている種別です。
一般的に、各駅停車を「緩行(かんこう)列車」、
その他の種別を「優等(急行)列車」として区別します。
(ただし、路線によっては準急や快速が緩行列車に入る場合もあります。)
一方、上記の4種類だけでは足りない場合、
以下の方法で種別名を増やします。
●1、特別○○、区間○○、新○○、通勤○○と、
特定の意味をあらわす名詞や副詞などを冠する。
急行よりも速い、またはデラックス車両を使う場合は、
「特別な急行」と言う意味で、「特別急行」と言う種別を使うことが多く、
一般利用客は略して「特急」と言っています。
なお、「特別」を使う場合は他に「特別快速(略して特快または、特快速)」がありますが、
今のところ特別準急と言う種別のある路線はありません。
区間○○は、一部区間のみ優等列車で運転する種別に使うことが多く、
区間急行、区間快速、区間準急とそれぞれの種別の上に付けます。
通勤時間帯に使う種別は通勤○○を使う場合が多く、
通勤急行、通勤快速、通勤準急が必要に応じて設定されています。
一方、休日のみ運転する場合は、
「ホリデー○○」と言う種別を設定することがあります。
(まあ、JR東日本に限っていると言えますが・・・。)
●2、二つの種別名を組み合わせる。
「快速急行」や、「快速準急」など2つの種別名を合わせる方法ですが、
「急行準急」と言う種別は原則ありません。
●3、●1の複数組み合わせや●1と●2の混合
通勤特別急行(通勤特急)、快速特別急行(快速特急または快特)、
エアポート快速特別急行(エアポート快特)、K特別急行(K特)、S特別急行(S特)、
準特別急行(準特急)、通勤特別快速(通勤特快)など、
●1と●2のパターンを複数組み合わせて種別を作る方法で、
路線によってはその路線しか馴染みのない種別があります。
●4、路線名や地域名、駅名を●1〜●3までの種別の前に冠する。
青梅特快、中央特快など、
路線名や地名を種別の前に冠する場合があります。
行き先が特殊な種別に採用されることが多いです。
●5、種別+愛称
(ただし、単なる列車の愛称は除く。)
同じ種別でも停車駅が異なったり、
指定席料金を徴収する場合、
種別+愛称を採用するパターンがあります。
快速「アーバン」、快特「京急ウィング」、特急「サザン」、特急「日生エクスプレス」など。
また、新幹線の場合、実は停車駅に限らずすべての種別は「超特急」になっています。
しかし、それでは停車駅や行き先、使用車両がわかりにくいため、
「のぞみ」「ひかり」「こだま」などの愛称をつけて分けています。
●6、強引に新種別を作る。
●1〜●5でも間に合わない場合は強引に新種別を作ることがあります。
一般的には○○ライナーで、
京成電鉄のスカイライナーやJR東日本の湘南ライナーなどがあります。
また、かつて西日本鉄道には「直行」(停車駅は特急と同じだが・・・。)、
名古屋鉄道には「高速」などレア種別もありました。
4、優等列車の停車駅パターン
優等列車が運転される場合、
注目されることは停車駅です。
各駅とも優等列車が停車すればそれだけ駅周辺が栄えるし便利になるので、
駅周辺の住民から「優等列車停車化要請」がよく行われるのですが、
無制限に停車駅を増やすと、
列車の速度が落ちて長距離利用客が不便になるだけでなく、
混雑が助長し、優等列車の走る意味合いが無くなってしまうので、
一定の基準で停車駅を決めています。
基本は利用客の多い駅に優等列車を停車させるのですが、
それ以外にも緩急接続が可能な駅、他線の乗換駅、
その鉄道会社の不動産部がPRのため特定の駅に停車させる場合があります。
(その他、鉄道会社の個人的思惑もあったりするらしいです。)
普段、優等列車が停車しない駅でもイベントなどで一時的に利用客が増える場合は、
臨時停車と言う形で停車することがある他、
平日と休日でその駅の利用客が変わる場合、
平日は優等列車が停車して休日は通過、あるいはその逆と言う駅もあります。
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「ノンストップ」は起点付近と終点付近のみに停車して、
中間の駅には一切停車しない方法です。
この方法をとる路線は、起点終点とも大都市でかつ、
ライバル関係の他社平行路線がある場合に多いです。
しかし、ノンストップの場合、途中駅の利用客にとって何も恩恵がないため、
ノンストップの優等列車の下に
いくつかの中間駅に停車する優等列車を設定することが多いです。
「隔駅停車」は正式な用語ではなく、
かの鉄道アナリストの川島令三氏が、
東急東横線の急行を揶揄するために作った造語(ダジャレ)です。
隔駅停車の由来は、優等列車の停車駅が1〜2駅間隔に停車するためで、
利用客の多い駅、乗換駅、地元の優等列車停車要望をことごとく取り入れた結果、
このような優等列車が出来てしまうことが多いです。
ただ、裏を返せばそれだけ各駅の利用客が全体的に多いと言えます。
改善策はノンストップと逆で、
この優等列車の上に停車駅を絞った優等列車を設定することです。
一般的な郊外通勤路線は
途中から各駅停車になる優等列車を設定することが多いです。
ターミナル側の各駅停車の本数は十分確保されているので、
優等列車の停車駅間隔は長くしますが、
節目の駅ごとに各駅停車が折り返すことにより、だんだん本数が少なくなるので、
列車本数の補完のため、優等列車をそこから各駅停車にします。
一般的な郊外通勤路線は郊外に行けば行くほど利用客が少なくなるので、
この方式は極めて合理的でかつ、
長距離の利用客は駅の大小にかかわらず
優等列車の乗車チャンスが多くなる利点があります。
ただ、輸送断面が比較的ターミナル近くで落ちる場合、
早々に優等列車が各駅停車となってしまうため、
所要時間が余計にかかるなどの不便が生じる場合があります。
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