電車の電化方式って何!?その1

鉄道車両には大きく分けて電車とディーゼル車があります。
(保存的には蒸気機関車もありますが・・・。)
そのうち電車は字のごとく電気で動く車両です。
電気で動くからには電気を電車の車両に供給しなければならないのですが、
その電気をどういった流れでどのような電圧・電流かきめ細かく決める必要があります。



1、電子の流れと電気の流れ

「電気が流れる」とは、
金属などの導体(電気が流れる物体)の中にある電子が流れることを言います。
かつては電気の流れと電子の流れは同じだと考えられていたのですが、
研究が進むと、電気の流れと電子の流れは真逆なことが分かりました。
そこで、大体の方は混乱するわけです。
ある鉄道技術本には「電子の流れは電気の流れと逆です。」としか書いてなく、
私はこれを読んだ瞬間、思考がフリーズしてしまいました。
書いてある当人は常識的に知っているので詳しく書く必要が無いと思ったのか、
それとも逆に知らないので詳しく説明出来ないのかよく分からないのですが、
これでは説明が不十分です。
そこで私はどうやったら分かりやすく説明出来るか色々考えた結果、
太陽と地球の関係を例にとればなんとなく説明出来ることが分かりました。


実際の太陽と地球の動きを見てみると、
太陽は殆ど動かず、地球は日々地軸を中心に回転しています。
しかし、視点を地球にすると、地球は殆ど動いてなく、
太陽の方が東から昇って南を通り、西に沈んでいく・・・、
つまり、太陽の方が動いているように見えます。

導体の中には電子の他に金属原子があるのですが、
電気を流すと、電子は流れますが、
(直流はマイナスからプラス、交流は行ったり来たり。)
金属電子は振動するだけで流れません。
これが実際の電気を流した時の状態です。
しかし、視点を電子側にすると、
金属原子の方が動いているように見えます。
(直流はプラスからマイナス、交流は来たり行ったり。)
このみかけの金属原子の流れが電気の流れと言う事になります。


電気の流れには大きく分けて直流と交流があります。
直流は電子の流れる方向が常にマイナスからプラス、
電気の流れる方向が常にプラスからマイナスの電気です。
また、電圧も一定で変化しません(抵抗などは考慮しない)。
直流の代表は乾電池です。
一方、交流は電子が行ったり来たりするため、
電気の流れも来たり行ったりします。
電圧も0〜+〜0〜−〜0と周期的に変化します。
1秒間でこの0〜+〜0〜−〜0(行ったり来たり)の変化を繰り返した
回数を周波数と言います。
周波数はヘルツという単位で表示されます。
東日本はドイツの電気技術を取り入れたため50ヘルツ、
西日本はアメリカの電気技術を取り入れたため60ヘルツと異なっています。
その境は必ずしも県境とか地方境ではなく、
50ヘルツの区域に中部地方の新潟県や山梨県が入り、
静岡県は富士川を境にして東が50ヘルツ、西が60ヘルツになっています。
そのため、新潟県は北陸電力ではなく東北電力のエリア、
山梨県や静岡県の富士川以東は中部電力ではなく東京電力のエリアになっています。
鉄道の交流電化も50ヘルツと60ヘルツの両方が介在していますが、
今のところ50ヘルツエリアと60ヘルツエリアをまたがっている交流電化線は、
北陸本線、東海道新幹線、北陸新幹線(長野新幹線)だけです。
北陸本線は50ヘルツエリアを通る区間が僅かなので、
すべて60ヘルツの送電になっています。
東海道新幹線は新富士〜東京間が50ヘルツエリアなのですが、
強引に東京駅まで60ヘルツで送電しています。
そのため、50ヘルツエリアの変電所は、
60ヘルツに周波数を変える周波数変換装置を備えています。
北陸新幹線(長野新幹線)は
安中榛名〜軽井沢間の軽井沢駅よりに切り替えセクションがあり、
ここで50ヘルツと60ヘルツを分けています。


鉄道しか見えない鉄道ファンは、直流は送電ロスが多く、
変電所を沢山設けなければならず、効率が悪いイメージを持っていると思いますが、
実際は直流の方が送電ロスが少なく、長距離送電に向いています。
交流はコロナ放電と言う電気の漏れがあり、
長距離送電するほど電力ロスが大きくなります。
(このロスがあってもある程度電力を維持するには、電圧を上げるしかありません。)
直流電化も交流電化のように2万ボルトとか2万5千ボルトの電圧だったら、
交流電化より長距離送電出来るため、変電所の間隔を長くする事が出来ます。
しかし、直流には致命的な欠陥があります。それは簡単に電圧を下げられないことです。
制御方式の所で述べましたが、直流の電圧を下げるには、
抵抗で下げるか(抵抗が増える〜電流が下がる〜電圧が下がる。)、
サイリスタやIGBTのチョッピング(ON、OFF)で下げる方法になります。
高圧の直流にすると、
多くの抵抗や大容量サイリスタ等を電車に搭載しなければならなくなります。
抵抗制御(狭義)の場合、床下が抵抗だらけになり、
超灼熱地獄になってしまいます。
大容量サイリスタやIGBTは価格が高く、
多くの電車の車両に搭載するのは不可能です。
そのため、最低限の電圧の下げだけで済むよう、
電圧は最高でも1500ボルトに抑えられています。
電圧は電気を流そうとする力なので、電圧が低いと電流も下がり、
長距離送電が出来なくなります。
だから、直流電化は変電所間隔が短くなり、効率が悪くなるのです。
とは言え、直流電化線に限って電車を多く運転しなければならない区間が多いので、
電力不足にならないよう、導体(電線)を太くして電流を上げています。
(導体が太くなると抵抗値が下がって電気が流れやすくなる。)
き電線がやたら太いのはそのためです。
じゃあ、「何で直流電化にしたのか?」と言うことになるのですが、
昔は交流モーターと言うものがなく、直流モーターしかなかったので、
交流を直流に変換することなく
モーターに電気が流せる直流電化が採用されたわけです。
一方、交流は変圧器で簡単に電圧を下げることが出来ます。
その電圧の下げ比率は変圧器の巻き線比率と同じになっています。
そのため、交流は高電圧で送電しても、
電車に変圧器を搭載すれば全く問題ありません。
しかし、先に述べたように昔は交流モーターが無かったため、
直流モーターに流せるよう、直流電気に変換する整流器も搭載する必要がありました。
直流電車に比べると、変圧器及び整流器という余計な機器が増えるので、
車両製造コストがかかることになります。
VVVFインバータ装置の登場で交流モーターが使えるようにはなりましたが、
この交流モーターは三相交流なので、
交流電化で一般的に使われる単相交流(しかも周波数が一定)は直接使えません。
そのため、VVVFインバータ装置に電気を流す前に、
整流器又はコンバータ装置で一旦直流にする必要になります。
勿論、VVVF制御でも交流電車は変圧器が必要です。
なので、現在でも交流電車は直流電車に比べて搭載装置が多いため、
車両製造コストも高くなっています。
そんな直流と交流の利点、欠点を考慮すると、
通勤路線のような沢山の車両が必要な路線は直流電化、
ローカル線で車両数も少ない場合は、
変電所保守コストが削減出来る交流電化が最適と言う事になります。
ただ、新幹線のような大量高速列車の場合、
直流電化だと電圧に限界があるため、交流電化になっています。

2、電位

鉄道関係技術本で意外と説明を省略されたりはしょられるのが電位です。
電位とは電気の位置エネルギーのことですが、
電気の位置エネルギーを目で見て実感することは出来ないので、
感覚的に分かりにくいものがあります。


電位を知るには異なる物質の位置エネルギーに照らし合わせると良いです。
発電所〜電鉄変電所間を省略すると、川の水の流れに例えることが出来ます。
(省略しない場合はジェットコースター、
特に東京サマーランドのフリーフォールが最適?)
川の水は上流域では流れが速くなっています。
水は高いところから低いところに流れるので、
標高0mから見ると、源流はかなり標高が高いことになります。
この高低差を電気で例えると電位差ということになり、
電位差とはいわゆる電圧のことです。
つまり、上流と標高0mの高低差が大きいように、電鉄変電所から出たき電電流と、
電位0の電位差は大きくなります。
つまり、電鉄変電所から出たき電電流は電圧が高いわけです。
そして、電気は電車の制御装置やモーター、補助電源装置等に流れます。
この時を川で例えると滝の所になり、
一気に高低差が少なくなります。
電気も同じく電車のところで一気に電位差が少なくなり、
電圧が下がります。
川の下流域では高低差が殆どなくなり、流れが穏やかになります。
川の下流域を電気で言えば帰線となり、やはり電流の流れは穏やかです。
電位差も殆ど無くなるため、電圧もかなり低くなります。
なので、帰線のレールに触っても殆ど感電しません。
しかし、き電線やトロリー線を触りながら帰線を触ると、
双方との電位差が生じるため、感電してしまいます。
まあ、帰線のレールに限らず、き電線やトロリー線を触ると、
人間や人間が立っている大地との電位差が生じるので、感電してしまいますが・・・。
(高電圧の電気人間なら大丈夫です!?)

電車の電化方式って何!?その2

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