電車の台車構造って何!?その2

3−4、ボルスタレス式ボギー台車

ボルスタレス式ボギー台車は文字通り、ボルスタ(揺れ枕)レス(省略)台車で、
「しゃらくせーから揺れ枕を無くしちめぇ。」と言う発想で生まれた台車です。
揺れ枕が無くなる事により、大幅な保守省力化が出来るだけでなく、
車体の重量も下げることが出来ます。


ボルスタレス式ボギー台車には揺れ枕が無く、
直接台車枠と車体が牽引装置と枕ばねで繋がっています。
牽引装置は「揺れ枕あり台車」で言う、心皿と中心ピンの役割をする他、
ボルスタアンカの役目もあり、
台車の進行方向の動きやブレーキ力を車体に伝えます。
ただ、「揺れ枕あり台車」と違い、側受が無いため、
車体の回転(動き)に合わせて台車が回転(動く)するため、
どうしても揺れが激しくなってしまいます。
そのため、高速で走る列車はヨーダンパと言うオイルの入ったピストンを挟んで、
揺れを低減させています。
カーブの遠心力や風による車体の揺れを吸収する揺れ枕を無くしている為、
これらの調整は枕ばねの空気ばねが代わりに行なっています。
ボルスタレス式ボギー台車の空気ばねは上下左右に動き、
車体の揺れを吸収する他、
カーブなどで車体が外側に引っ張られた場合、
引っ張られる側(外側)の空気ばねの空気圧を上げることにより、
車体が外側に引っ張られ、台車ごと脱線するのを防いでいます。
なお、「ボルスタレス式ボギー台車は脱線しやすい」
と言うのは必ずしも言えないわけで、
揺れ枕があろうが無かろうが、
想定外の車体の引張りがあった場合は脱線する危険性があります。
むしろ問題は車体の軽量化の方で、
車体が軽ければ揺れ枕があっても脱線する可能性が高くなります。
・・・ですが、川島教と言う鉄道宗教の信者にその事を言うと激怒する可能性があるので、
川島教信者の鉄道ファンと話すときは言動に気をつけた方が良いです。
(とりあえずボルスタレス式ボギー台車をけなしておけばOKです。)

3−5、振り子式ボギー台車

電車であろうと自動車であろうとカーブにかかると遠心力が働き、
車体がカーブ外側に引っ張られるため、
スピードを落とさなければならなくなります。
しかし、カーブの多い路線だと、速く走れず、
なかなかスピードアップが難しい状態になってしまいます。
そこで、国鉄時代に考え出されたのが振り子式ボギー台車で、
カーブに差しかかると車体がカーブ内側に傾くようにし、
外側に引っ張る遠心力と相殺させています。


振り子式ボギー台車は車体と台車枠の間にころころ転がるころを挟み、
カーブに差しかかると「ころ」が転がり車体をカーブ内側に傾けさせます。
車体を内側に傾けさせるには、
振り子の中心(車体が1回転したと仮定した時の回転の中心)を車体の重心より高くさせます。
こうすることにより、車体の下部が遠心力で外側に引っ張られ、
車体上部はカーブ内側に傾きます。
逆に振り子の中心を重心より低くすると車体上部が遠心力で引っ張られてしまい、
車体上部はカーブ外側に傾いてしまいます。
そうすると車体全体で見ると外側に傾いてしまうため、
全く振り子式にする意味合いがなくなる他、
かえって脱線の危険性を上げてしまうことになります。
なお、上の図のような振り子式ボギー台車を自然振り子式台車と言います。


自然振り子式台車の欠点は、
緩和曲線(本カーブになる前のだんだん曲率半径が短くなるカーブ)に差しかかると
いきなり車体が大きく傾くため、
乗り心地が悪い他、
普通の列車ではあまり無い「乗り物酔い」を起こしてしまう乗客も出てしまいます。
そこで、車体と台車枠の間に振り子梁を挟み、
この振り子梁がころによって傾くのをアクチュエーターと言う器具で調整することによって、
必要以上の傾きや傾き復帰の遅れを無くす「制御付き振り子式台車」が開発されました。
緩和曲線では曲率半径に応じて徐々に車体を傾けさせるようにしているため、
車体がいきなり大きく傾くことは無くなり、
乗り心地も向上しています。

そんな振り子式ボギー台車は国鉄末期からJRの初期まで、
カーブの多い路線を走る特急車両に採用され続けたのですが、
「保守が面倒な割りに大してスピードアップしないぞ!!」と言うことで、
採用されなくなりつつあります。
ボルスタレス台車などは空気ばねで傾きが調整できるようになっているので、
それを応用した台車(車体傾斜制御装置式台車)や低重心車両、
後述の自己操舵式台車に切り替わりつつあります。

3−6、自己操舵式ボギー台車

そもそもカーブを高速で曲がれないのはボギー台車の構造が問題で、
ボギー台車は直線でもカーブでも車軸はいつも一定方向なので、
カーブになると遠心力で車体が引っ張られ、
台車も引っ張られると車輪のフランジがレールに激しくこすれることになり、
レールや車輪を傷めてしまうだけでなく、乗り心地も悪くなります。
そこで新しく考え出されたのが自動操舵式ボギー台車です。


自動車の台車の場合、高速道路などの高規格道路以外はカントなど無いため、
手動操舵式になっています。
当たり前ですが、車軸の向きは自動車のハンドルで変えます。
列車の場合はカントの傾きと踏面の傾きにより、
カーブを曲がるのですが、
(曲線レールだから列車はカーブを曲がると言うのは100点満点の回答ではありません。)
それだけだと不十分な面があり、先ほど申しましたアタック角が微妙に生じてしまいます。
それを無くすために自動操舵式ボギー台車は、
自動車の台車と同じように車軸の向きをカーブに合わせて変え、
車軸とカーブの中心を通る線を一致(アタック角を0に)させます。
車軸の向きはZリンクの動きにより変えるのですが、
列車のハンドルは自動車で言う「アクセルとブレーキ」しか無く、
方向転換するような気の利いたハンドルはありません。
そのため、
Zリンクの動きの調整はアクチュエーターやコンピュータなどで自動に制御します。

4、軸箱支持方式

台車枠と軸箱は振動を吸収する軸ばねで繋がっているのですが、
それだけだと軸箱が自由に任せて動いてしまい、乗り心地はあまり良くありません。
そのため、ある程度軸箱を支える(というより押さえる)ものが必要になります。
軸箱を支える方式の分類を軸箱支持方式と言うのですが、
これはかなりの種類があって、混乱してしまいます。


上の図は代表的なものであり、実際にはもっと種類があります。
比較的古い車両はぺデスタル式が多く、
新しい車両はアルストム式や軸梁式が多くなっています。
ぺデスタル式は軸箱を軸箱守で挟みこむタイプで、
軸箱守が軸箱の左右の揺れを押さえる役目をします。
構造は単純なのですが、軸箱守と軸箱の間に摩擦が生じるため、
軸箱守が磨耗してしまいます。
磨耗すると軸箱守と軸箱に隙間が出来てしまうため、
軸箱守の役目がなくなってしまいます。
そのため、定期的に両者の隙間をつめなければならず、
保守の面では面倒になってしまいます。
円筒案内式は、軸箱と台車枠にそれぞれ円筒を取り付け、
それをかみ合わせて繋げる方式です。
軸箱側の外筒と台車枠側の内筒はしゅう動材で繋がっていて、
このしゅう動材がゴムのように動くことによって、
衝撃を吸収しています。
ミンデン式は軸箱と台車枠を板ばねで繋ぐ方式で、
軸箱の左右の動きを板ばねである程度吸収します。
ミンデン式は軸箱の両側に板ばねを付けて支えるタイプが一般的ですが、
これを簡略化した、軸箱の片側だけに板ばねを付けて支える方式もあります。
積層ゴム式は衝撃の吸収を全部積層ゴムで行なってしまう方式です。
積層ゴムは軸ばねと軸箱支えの両方を行なうので、
コイルばねは不要になります。
保守はかなり楽になりますが、ゴムは劣化していくので、
定期的な交換が必要になります。
アルストム式は軸箱と台車枠をリンクで繋げたものです。
リンクは上下には動くのですが、
左右には動かないので、軸箱の左右の揺れを防止することが出来ます。
また、構造が単純になり、保守も楽になります。
リンクは軸箱両側に付けるタイプもありますが、
部品数を減らすため、片側のみにつけるモノリンク式が一般的になっています。
軸梁式は軸箱と台車枠を軸梁で繋げたもので、
軸梁は上下に動くのに対し、左右は固定されていて動かないので、
軸箱の左右の揺れを押さえることが出来ます。

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