電車の台車構造って何!?その1

鉄道趣味で何がよく分からないかと言うと、
台車構造だと思います。
これは、台車構造の種類が沢山あると言う理由もあるのですが、
玄人鉄道ファンや鉄道専門家に「台車の仕組み」がよく分かっていない方が多く、
ただの用語連発や製造メーカーの話題で終始してしまうからです。
こういった玄人鉄道ファンや鉄道専門家が投稿・執筆した鉄道雑誌や本を読む限り、
我々初心者鉄道ファンや素人鉄道ファンは、
台車構造を理解することは出来ません。
ここでは連発される台車構造関係の専門用語が何なのかを
明らかにしたいと思います。



1、車軸と軸箱

当たり前ですが、車輪を貫通する回転棒である車軸は、
何らかの形で台車枠(だいしゃわく)と繋げなければなりません。
鉄道車両の場合、
台車枠に接続された軸ばねと軸箱取付器具に軸箱という箱を取り付け、
そこに車軸を貫通させることで台車枠と車軸が繋がります。


上の図は車輪と車軸と台車枠の関係図です。
列車の車輪は内側が大きく(円の直径が大きく)、
外側が小さく(円の直径が小さく)なっています。
内側の大きい部分をフランジと言い、
これがレールから脱線するのを防ぎます。
しかし、実際にはカーブのカント(両レールの高低差)が適切に調整されているのと、
車輪とレールが接触する踏面は斜めになっているため、
フランジとレールが接触することはあまりありません。
フランジとレールが接触した時は、キーキーとかホーホーとか言う音がします。
これらの音は急カーブでよく起こります。
なお、ケーブルカーなどの特殊な車両以外はフランジは内側のみで、
外側には付けません。
これは、レール幅に微妙な誤差があるためで、
レール幅1067ミリと言っても、1067ミリジャスト!と言うのは殆どありません。
両側にフランジを付けてしまうと、レール幅の誤差がある箇所で車輪がつっかえてしまい、
前に動くことが出来なくなってしまいます。

一方、軸箱は車軸の両端にあります。
ですが・・・、この軸箱に車軸をただ貫通させるだけだと、
車体の重みやらなんやらの重みのせいで軸箱と車軸の間に強い摩擦が起こり、
間違いなく車軸は円滑に回転しません。
無理矢理回転させようとすると馬力(トルク)が必要になるので、
モーターを無駄に強力にしなければならなくなります。
更に最悪なのは、軸箱と車軸が摩擦で磨耗してしまい、
早期寿命に繋がってしまいます。
なので、これを防止するために、
軸箱と車軸の間には「ころ軸受」と言うころころ回転する円筒
または円錐の金具を挟みます。
なお、ころ軸受の代わりに油がしみこんだパットを挟む場合もあります。
この場合、軸箱と車軸の間に油が入るため、摩擦が軽減されます。

2、台車の配列


鉄道車両の台車は2軸車、ボギー車、連接車の3つがあります。
2軸車は1両に付き車軸は2本、
つまり、車両前後に車輪2輪ずつ、計4輪の車輪だけで車体を支える方式です。
一時期「3セクブーム」と言う古きよき時代があったのですが、
この頃作った安上がりレールバスに2軸車を試験的に導入しました。
これは、車両製造費削減目的が主だったのですが、
車輪や車軸が少ないと言うことはそれぞれにかかる負担も大きいわけで、
劣化や歪みなどが思ったよりも酷く、
結局、「駄目じゃん」と言うことになってしまいました。
更に、2軸車は車軸とカーブからカーブの中心へ向かう線でなす角(アタック角)が
大きくなってしまい、
揺れが激しく脱線の危険性もあります。
・・・と、言うわけで、現在2軸車の採用は無く、
ボギー車が主流になっています。
ボギー車は前後2軸4輪ずつ、計8輪の車輪で車体を支える方式です。
ボギー車は安定して車体を支えているため揺れが小さく、
脱線の危険性も軽減されます。
また、車体を大きくすることが出来るので、
通勤車両や新幹線車両などの大量輸送車両に適しています。
一方、連接車は、台車と連結器がセットになったような台車で、
2両の車両に台車を橋渡し的に配しています。
この方式にすると台車の数が減らせるため、
車両製造費低減や、保守省力化につながるだけでなく、
急カーブでもある程度の速さで曲がれるなど、
スピードアップの効果もあります。
しかし、連接車は安定性を考えると車体を長くすることが出来ず、
通勤電車や新幹線の車両などでこれを導入すると、
無駄に編成車両数が多くなると言う欠点があります。
編成車両数が多くなると、貫通路や貫通扉を多く設ける必要があり、
書類上でも手続きが面倒になり、折角の利点も欠点で相殺されてしまいます。
また、ボギー車と連接車を混用で運用するとドア位置が不一致になり、
乗客の混乱の元になるだけでなく、
ホームドアやホームゲートが採用出来ないと言う欠点が出るので、
望ましい運用とは言えません。
なので、こんなことをやるのはおそらく旅客サービス度外視の
どっかのJR路線だけだと思います。

3、ボギー台車の種類

ボギー台車は大きく分けて揺れ枕(ボルスタ)ありとなしの2種類があります。

3−1、揺れ枕吊り式ボギー台車


あーあ、専門用語ばかりかよ・・・、となるのですが、
台車構造で専門用語が多くなる原因がこのボギー台車の構造です。
まあ、上から順に説明していきます・・・。
先ず、心皿と中心ピンですが、
上揺れ枕の心皿に車体下部にある中心ピンを差し込むことによって、
台車と車体が繋がります。
勿論、差し込んでいるだけなので、
車体を上に引っ張れば簡単に台車からすっぽ抜けます。
こんなちゃちい心皿と中心ピンだけでは車体を支えることが出来ず、
車体の回転(動き)と共に台車もぐらぐら回転(動く)してしまいます。
それを防止するためにあるのが台車側に付いている側受で、
側受が車体を受けることにより、
安定して車体を支え、かつ側受と車体に摩擦が出来るため、
無駄な台車の回転も防ぐことが出来ます。
ただ、側受と車体の摩擦・・・と言うことは、
当然側受などは磨耗していくと言うことで、
保守も面倒になります。
上揺れ枕と下揺れ枕は車体の揺れを吸収する目的で挟むもので、
カーブの遠心力や風などで車体が大きく引っ張られても、
揺れ枕がそれを吸収することによって、
台車が車体に合わせて引っ張られて脱線することを防いでいます。
上揺れ枕と下揺れ枕は枕ばねで繋がっていて、
一般的にはコイルばねが使われます。
コイルばねとは皆さんが普通に想像するばねで、
金属の線を円筒状にぐるぐる巻いたものです。
ばねは台車の上下振動を吸収する目的があります。
しかし、枕ばねはばねであって、
台車の進行方向の動き(動力)やブレーキ力を
車体に伝えることがあまりよく出来ないので、
台車枠と上揺れ枕をボルスタアンカという器具で接続し、
進行方向の動きやブレーキ力を伝えています。
台車枠からは吊りリンクと軸ばねが接続されていて、
吊りリンクは下揺れ枕に、軸ばねは軸箱にそれぞれ繋がっています。
揺れ枕吊り式ボギー台車は車体の揺れを吸収する安定した台車なのですが、
図で見た通り、構造が複雑なため、保守はかなり面倒です。
ですので、保守省力が主流の現在ではあまり採用されていません。

3−2、インダイレクトマウント式ボギー台車

「揺れ枕吊り式ボギー台車は構造が複雑だぜ・・・。
もうちっと構造を簡単にしようぜ。」
「揺れ枕吊り式ボギー台車だと車両の重量が重くなるぜ・・・。」
・・・と言うことで登場したのがインダイレクトマウント式ボギー台車と、
ダイレクトマウント式ボギー台車です。


揺れ枕吊り式ボギー台車との決定的な違いは、
揺れ枕を1つにしたことです。
そのため、吊りリンクが無くなります。
吊りリンクは台車や車体が揺れれば揺れるほど
磨耗劣化するので保守が面倒なのですが、
それが無くなる事で保守省力化が出来ます。
台車枠と揺れ枕は枕ばねで接続されていて、
このばねは従来のコイルばねの他、空気ばねも使われています。
空気ばねは空気圧で振動を吸収するばねで、
コイルばねの欠点である、車体の重量による車体の浮き沈みを、
空気圧の調整によって防ぐことが出来ます。
(乗客が沢山乗って車体が重くなった場合は空気圧を上げて車体を沈まないようにし、
閑古鳥が鳴いていて車体が軽いときは空気圧を下げて車体の浮きを防ぎます。)
乗り心地はコイルばねのガクンガクンした硬い乗り心地に対し、
空気ばねはふわふわと柔らかい乗り心地になっています。
空気ばねの欠点は停車中でも車体が揺れる度に、
プシュプシュ空気の漏れる音がしてうるさいことが挙げられます。
そんな空気ばねもやはりばねなので、
進行方向の動きを伝えるのはあまりよく出来ません。
そのため、台車枠と揺れ枕はボルスタアンカで繋ぎます。
台車枠からは軸ばねが出ていて、軸受に繋がっています。

3−3、ダイレクトマウント式ボギー台車


ダイレクトマウント式ボギー台車はインダイレクトマウント式ボギー台車を逆にしたもので、
揺れ枕と車体は枕ばねとボルスタアンカで繋ぎ、
台車枠と揺れ枕は心皿と中心ピンで繋いでいます。
そのため、側受は台車枠に取り付けます。

電車の台車構造って何!?その2

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