地図読図とは

地図読図とは地図から情報を読み取ることですが、
単に地図記号で表現していることだけを抜き取るだけのことでは無く、
その記号から推測できる地形の成り立ち、歴史、
街の形成などまで読み取って始めて「地図読図」と言います。



1、単なる地図情報列挙と地図読図の違い


一番わかりやすい例が上記のような地図ですが・・・、
この地図に載っている情報をそのまま挙げると、
●等高線がある
●道がある
●河川がある
●果樹園がある
●家が数軒ある
と言うことになります。
しかし、これでは読図にはなりません。
この地図の例は分かりやすいので、気付いている方も多いかと思いますが、
この地図から先ず分かることは、
「ここは扇状地である。」と言うことです。
その他に、河川が途中で破線になっていることから、
この河川は通常は地下を流れていて、
大雨とかにならない限り、水が表層面を流れないことが分かります。
つまり、この地形は地中に水が浸透しやすいのです。
こういうことから、水はけが良く、
多くの水を引水する必要がある、
水田などは向かないことが分かります。
しかし、南向きの斜面なので、
果樹栽培には適していることが分かります。
また、そんな果樹園の中にある家々は果樹園を専業、
もしくは兼業している農家だと言うことがわかります。
更に交通が不便など色々あるのですが、
そこまで読み取って始めて「読図」と言います。


もう一つの例を挙げます。
やはりこの地図も地図に載っている情報をそのまま挙げると、
●道路がある
●沢山の建物がある
●市役所がある
●ビルがある
と、なります。
この地図は見た感じ、市街地と言うことは分かると思います。
特に、地図内に市役所があるので、ここが中心部と言うのが推測されます。
市役所は建て替えなどで郊外に移転する場合もあるので、
注意が必要なのですが、建物の量から考えると、
昔からここに市役所があったことが分かります。
注目は中央部にある遊歩道です。
遊歩道に関しては地図のページ8内の今後のページで詳しく解説しますが、
考えられるのは、ここの部分が元々河川だったのか、
線路跡だった可能性が高いと言うことです。
河川は低い所を基本流れるので、
等高線を見れば分かるのですが、
市街地などは勾配が緩かったり、
他の地図記号で阻まれて分かりにくかったりします。
線路跡との違いは、曲線がきつかったりすることが多いことです。
河川は90度直角に曲がることがあるのですが、
線路はそれは無いので、
そのような急な曲線がある場合は、河川の可能性が高いことが分かります。
この地図においてもカーブの形状から、
ここは河川跡の可能性が高いことが分かります。

2、磁北と真北

地図のページ4で磁北と真北、方眼北の解説を致しましたが、
地図読図上でも、この違いを知る必要があります。


地球の頂点を結ぶつまり、南極点と北極点を結ぶ線を経線と言うのですが、
真北(測量用語では「しんぽく」、一般的言い方は「まきた」)は、
この経線上の北を言います。
基本的に地形図などの縮尺が大きい地図は、
経線で図郭(地図の外の枠)を切っているので、
(縦の)図郭の方向が真北になります。
一方、世界全図など小縮尺の地図は、
図内に引かれている経線の方向がそのまま真北になります。
なお、地形図より大きい縮尺の地図は座標軸で区切っているので、
図郭線の北は方眼北(座標北)方向になります。

民間の日本国内地図も、
基本的に国土地理院の地図を使って作成しているため、
地形図と同じ縮尺の地図は大体図郭が真北、
それより大きい地図は図内の経線方向が真北になっています。
ただ、Googleマップのように世界全図から
こまかい地域まで切り替え表示が出来る地図は、
途中で図法が変わって真北方向が変わるので注意が必要です。


そして、真北と磁北は時期や年、地域、緯度でずれが変わるので、
一概に言えないのですが、
日本国内では概ね5度〜10度のずれがあります。
ごく狭い範囲なら特に問題は無いのですが、
広い地域や、登山などで方位磁針を活用している方は注意が必要になります。
そのため、地形図などの国土地理院発行の地図には、
磁北と真北のずれの角度が凡例の所で書かれています。

3、方向音痴とは
(なお、ここでは体の器官が不調で起こる場合は除外しています。)

方向音痴とは今自分がいる位置が認識できず、
混乱してしまうことを言います。
そのため、いくら測量士、測量士補でも、
目隠しをされて知らない場所に連れて行かれた場合、
目隠しを外した途端、
自身のいる位置が分からなくなり、混乱してしまいます。
つまり、方向音痴はどの人間でも起こりうることなので、
「方向音痴だから悪い」とかそういうことではありません。

極端な例ですが、今まで日本地図を見たことが無い人に、
「東京都から見て青森県はどちらの方向?」と訊いても、
全く分からないと思います。
我々は地図を見て青森県は東京都より北にあると言うことを認識しているので、
北と分かるだけです。
そのため、外国の知らない土地の地名で方角を訊かれた場合、
全く答えられません。
つまり、方向音痴になる要素の一つは、
その場所の地図を自身の記憶にインプットしていないことが挙げられます。
更に深掘りすると、地図読図が出来ない、
もしくは苦手な人は方向音痴になりやすいと言うことです。
地図から引き出される情報量とそこから推測できるものが想像量が少ない場合、
自身のいる場所の認識が希薄になり、
混乱してしまうのです。


自分がいる位置を
頭の中の地図上にプロットすることが適切に出来るようになれば、
方向音痴を解消することが出来るようになります。
勿論、それにはトレーニングが必要なのですが、
少なくとも自分の生活圏の地図はしっかり常日頃から見ておく必要があります。
これは、災害などが起こった場合、
ハザードマップを見ても避難場所に適切に避難できない危険性があるからです。

●例として、海岸線近くの場所で地震があった場合、
海の方向へ逃げてしまう。→津波にのまれる危険性
地盤の脆い崖の近くに避難してしまう。→崖崩れの土砂に埋まる危険性
埋立地に避難してしまう。→液状化現象などで土砂にのみ込まれたり、
                     倒壊建物に巻き込まれる危険性、津波の危険性
と、危険な場所に避難してしまう。

もう一つの要素は錯覚もあります。
道が碁盤の目状に規則的に並んでいるとか、
建っている建物が同じような建物ばかり(建て売りや集合住宅に多い)とか、
青木ヶ原樹海のように同じような植生の木々が多く、
薄暗いなどがこれにあたります。
こう言った場合、
同じような景色の羅列で自分のいる位置が分からなくなるのです。


そして、一番恐いのは位置認識にずれが出た場合の復帰作業のミスです。
山岳で遭難する人はよく登山道から外れてしまうことが多いです。
外れる理由は獣道に誤って入ってしまったとか、
獣に遭遇して必死に逃げたら別の道に行ってしまったとか、
崖を滑落したとか色々ありますが、
そうなると何れも混乱を伴い、焦りも出てくるので、
位置認識が正常に出来なくなってしまうのです。
そして、一番の理由が例えば獣から逃げていたとか、
崖から滑落したとかいう時点で位置認識の記憶に空白が出来ることが多く、
(獣から逃げる、崖から滑落に気が集中してしまうので)
その空白が位置認識のずれを引き起こすのです。
これを記憶断絶前の位置認識で補正しようとすると、
余計に位置がずれてしまい、遭難の深みに嵌まってしまうのです。
このようなことになった場合、
慌てて位置の復帰を図ろうとせず、
冷静に考えて記憶を思い出す方が最善な解決方法の一つとなっています。

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