氷の地形形成

氷の浸食作用で形成される地形があります。
これは液体の水とはまた異なった地形形成をします。
水は流れが速く、浸食力が大きいだけでなく、
氾濫などで増水すると、広範囲が浸食されるので、
広いV字状の谷が形成されるのに対し、
氷は流れが遅く、浸食力も小さく、
氷の増減で浸食(氷食)が変わるので、
比較的狭いU字状の谷を形成します。

日本では氷河期に覆った氷河が早々に溶けてしまったので、
他の地形形成要因で痕跡が残っていないところが殆どです。
しかし、高山地帯は比較的氷河が後まで残ったので、
氷で出来た地形を見ることが出来ます。



1、カール(圏谷)

カール(curl)はくるくる巻きした髪型や、
今、東日本では販売していない明治製菓のカールのように、
C字を寝かしたような巻きのある、
お椀状の地形を言います。
ただ、英語ではこの地形をカールではなく、
サーク(cirque)と言うので注意が必要です。


カールは氷が回転運動しながら下流に移動することにより、
お椀状に地面が削られ、形成されます。


結果として、C字を寝かしたような浅い谷が形成されます。
下部でU字谷に合流するカールもあります。
また、最下部では後で説明するエンドモレーンが形成されることが多いです。
なお、カールは山頂付近に形成されやすいので、
雨天以外は水が流れていない所が多いです。
しかし、エンドモレーンにより水が堰き止められ、
池、湖が形成されることもあります。
また、カールが山頂付近で沢山形成されると、
山肌が大きく削られ、先のとがった山頂になります。
そのとがった山頂をホルン(尖峰)と言います。

2、U字谷

カールは山頂付近で形成されるのに対し、
U字谷は山と山の間に形成されます。


U字谷はカールより規模が大きく、
氷河の浸食で形成されます。
先に書いたとおり、水は流れが速く浸食力が強いため、
V字状に削られるのに対し、
氷は浸食力が弱く、氷の状態でそのまま動くため、
棒状の氷ままで削られます。
そのため、U字状の谷が形成されます。
また、氷河の移動圧力は真ん中より両側の谷壁側なので、
真ん中だけでなく、谷壁側も削られやすいのも、
U字状の谷になる要因です。


U字状の谷は氷解後、水の浸食でV字の様になっていくところもあります。
また、海面上昇により、U字谷に海水が流れ込んだところを、
フィヨルドまたは、リアス海岸と言います。
また、カールと同じようにエンドモレーンで水が堰き止められることがあり、
それで出来た湖を氷河湖と言います。

3、モレーン(堆石堤)

氷は浸食で削った岩石をゆっくり運搬していきます。
その運搬した岩石が氷河の解氷後に堤防状に堆積します。
この堤防をモレーン(堆石堤)と言います。


氷河はゆっくり流れて浸食してU字谷を形成していきます。
その浸食で削られた岩石は、氷の中に内包しますが、
氷が溶けてだんだん薄くなる(消耗する)と運搬圧力が高まり、
岩石が運ばれるようになります。
氷河の谷壁寄りでは多くの岩石が削られ、
多くの岩石が運ばれます。
一方、合流点では双方の運ばれた瀬割側の谷壁寄りの岩石が中央に集まり、
そのまま氷河の真ん中で運ばれていきます。
そして消耗により、完全に氷が終わる部分では運搬が止まり、
削られた岩石が堆積します。


氷河が完全に溶けると、
堤防状に堆積した岩石が露出します。
真ん中に筋状に堆積した堆石堤をメディアルモレーン(中央堆石堤)、
谷壁寄りに堆積した堆石堤をラテラルモレーン(側堆石堤)と言います。
また、氷河の末端部に氷によって運ばれた岩石が沢山堆積して、
堤防状になります。
これをエンドモレーン(終堆石堤)と言います。

4、ケーム/エスカー/ケトル

氷にかかわる地形は色々ありますが、
氷自体と言うより、氷が融解することにより組成される地形もあります。


氷上に流れていた水により多くの岩石が運ばれるのですが、
氷が融解した跡、水が流れた位置に円錐状の岩石の堆積が出来ます。
この岩石の堆積をケームと言います。
モレーンと似ているのですが、
モレーンは氷が運ぶのに対し、
ケールはあくまでも氷上の流水で運ぶという違いがあります。
谷壁側の氷上に水が流れていた場合、
多くの岩石が流れるので、
岩石の堆積も多く、帯状になります。
この堆積をケーム段丘と言います。


氷河などの氷の下部にトンネル状の空洞が出来た場合、
そこに水が流れることがあります。
やはり、その流水も岩石を運ぶのですが、
氷の融解後、水の流れていた部分に筋状の岩石の堆積物が出来ます。
それをエスカー(江ノ島のエスカレータではない)と言います。


ケールやモレーンなどの堆積物の中に氷が出来た場合、
その氷が融解すると陥没が起きて穴が空きます。
その穴をケトルと言います。

地殻変動の地形形成

川柳五七の地図のページ7へ戻る

川柳五七の地図のページトップへ

たわたわのぺーじトップへ