河川の地形形成

河川は身近にあるため、
河川によって形成された地形はあちこちで見られます。
地形名称も小学校の社会科から中学〜高校の地理まで、
耳にたこができるくらい習ってきた、おなじみのものばかりです。
「もう、知っているよ。」と言われそうですが、
一応ご紹介いたします。



1、扇状地


扇状地は今まで急な斜面で谷筋を流れていた河川が、
谷を抜け斜面が急に緩やかになるところに形成される扇状の地形です。
流路が谷筋により押さえつけられていたのが急に無くなり、
放射状に水路が分岐していきます。
それぞれの水路が洪水などにより土砂を堆積させるため、
ホタテ貝のような扇状に膨らんだ地形になります。
等高線は扇の両端が急(等高線の間隔が狭い)ですが、
扇状地内(扇の中)は緩やか(等高線の間隔が広い)で、
基本的には扇端に向かって緩く弧を描くようになっています。
なお、堆積物の粒子の大きさで等高線の間隔が変わり、
粒子が大きいと等高線の間隔が狭くなり、
粒子が大きいと等高線の間隔が広くなります。
扇状地内は堆積物に水が浸透しやすく、
扇頂から扇端までどんどん水が流れるため、
水はけが良く、逆に言うと水田には向かない地形だと言えます。
そのため、扇状地の農地利用は果樹園や畑が多くなっています。
なお、現在の日本は堤防によって川の流路を固定しているところが多く、
堆積物がまんべんなく扇状地に広がらなくなり、
天井川化(堤防内が堤防外より高い)しているところもあります。

2、三角州


三角州も扇状地同様、
河川が放射状に分岐し、土砂が堆積して出来た地形ですが、
殆ど起伏が無く、海や湖の河口付近に形成される点が異なります。
形成条件は川の流れが緩く、
海や湖側の波も穏やかなのが条件です。
これは、川の流れが速いと、海の方へどんどん土砂が流れてしまい、
波が荒々しいと堆積した土砂を浸食してしまうからです。
三角州の構成断面は、
重い粘土が河口で分散しながら沈殿し(底置層)、
その上に川が運んだ砂が堆積します(前置層)。
そして、一番上にまだ細かくなりきれていない粗い砂が
覆い被さる形(頂置層)で形成されています。
扇状地と異なり、水はけが悪くジメジメしていて、
大抵は湿地帯や水田になっています。
ただ、海や湖に近いが上、市街地化しているところもあるので、
植生や陸部地形で判断するより、
河川の形状で判断した方がわかりやすいです。
なお、三角州は鳥趾形状と円弧形状があり、
鳥趾形状は川の流れが緩やかで波も穏やかな場合に多く形成され、
円弧形状はそれよりも川の流れが速く、
波もやや強い場合に多く形成されます。
三角州というと広島を思い浮かべる方が多いと思いますが、
結構日本全国にあり、
東京も下町側は巨大三角州上にあります。
(埋め立てなどが進行して分かりにくくなっていますが。)

3、河岸段丘(河成段丘)


川に平行するように階段状の台地が連なっている所を、
河岸段丘(河成段丘とも言う)と言います。

河岸段丘は元々平坦だったところが、
河川によって下へ下へと削られていく(これを下刻と言う)ことによって出来ます。
(この削った土砂が下流域で三角州や沖積平野を形成させる要因になります。)
段丘の上の方に街が形成されることが多く、
これは洪水などの被害が少ないためと思われます。
しかし、上の方の段丘は河川までの高低差が大きく、
それに伴い、地下水脈もかなり下になってしまうため、
井戸を掘ってもなかなか水に辿り着けない欠点があります。
そのため、農地的には水田利用は少なく、
畑や果樹園が多くなっています。
地図上では河岸段丘の等高線は河川に沿って平行になるのですが、
等高線が密になったり、疎になったりを繰り返しています。
等高線が疎になっている部分は段丘部分で、
等高線が密になっている部分は段丘崖と言う崖になっています。
上流〜中流域では河岸段丘が結構あちこちで見られ、
東京から近いところでも、羽村や青梅、あきる野などで見られます。
川、鉄道駅、市街地が別々の段丘にある極端な例は、
東京から近いところでは、山梨県の上野原市と、
群馬県の沼田市があり、
教科書の河岸段丘の例では、
そのどちらかが掲載されていることが多いです。

4、自然堤防、後背湿地、三日月湖


自然堤防、後背湿地、三日月湖は、
何れも平坦で蛇行している河川に見られる地形です。
自然堤防は蛇行している川沿い、
もしくは旧流路(旧河道、三日月湖)沿いに見られる自然発生的な堤防で、
河川が大雨などで増水したとき、
運ばれた砂などが堆積して出来たものです。
ただ、人工の堤防のように高さがあるわけではないので、
洪水などで川が増水し、越水してしまうことが多々あります。
自然堤防を越水して水浸しになってしまう所を後背湿地と言います。
後背湿地は水はけが悪く、越水後もじめじめした状態のままです。
そのため、湿原、荒れ地、水田になっているところが多いです。
それに対し、自然堤防はそこそこ水はけがあるので、
その部分に集落が形成されているところもあります。
地図における自然堤防と後背湿地は、その違いで見分けられます。

一方、三日月湖は旧流路のうち、常時水がたまっていて、
湖(実際は沼)のようになっているところで、
三日月のような形になっていることから、
そう名付けられました。
蛇行した河川は真っ直ぐ流れようとする力が働き、
徐々にに流路が真っ直ぐになっていきます。
そのとき、本流から切れて残された流路部分が旧河道や三日月湖になります。

5、おまけ・中州

中州は地形形成と言うほどオーバーなものではないのですが、
地図製図上では重要なので一応載せます。


中州は河川の運ばれた土砂が堆積してできた、
水が流れていない陸地部分を言います。
基本的に地図を製図する場合は、
空中写真を基にして中州を表示します。
中州は大雨などで増水した際、
消失したり、逆に新しく中州が形成されたりと変化が激しく、
地図で表示されている中州と
実際の中州の位置が異なっている場合があります。
それでも表示するのは、「川の流れ」を強調するためです。
中州がないと湖、または、河口に近い緩やかな流れの川に見えてしまい、
水が流れている感が無くなってしまいます。

海の地形形成

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