水路・海測量等

水路(大規模運河規模)や海の測量は、海岸の土木工事目的と、
地図における海底地形調査目的(等深線など)で行なわれます。
地図は字のごとく陸地測量(川・用水路含む)であり、
海図の作成は国土地理院でなく海上保安庁が行なっているのですが、
海図の作成上必要な情報を提供するために水路や海の測量が行われています。



1、船位測定

水路や海の測量は、大抵船に乗船して行ないます。
しかし、その船の位置が分からないと、
測量も何も出来ません。
水深の測定や波の測定をする前に、
先ず、船位測定と言う作業を行ないます。
今はGPSがあるので、
「GPSを使えば直ぐ船の位置が分かるじゃん。」とおっしゃる方も多いと思いますが、
ここでは「考え方」として旧来からの方法をご紹介します。

船位測定は大きく分けて二つに分かれ、
陸地の基準点(既知点)にトランシットやトータルステーションを据え付け、
船と他の基準点でなす角及び、基準点と観測船の間の距離を測る方法と、
観測船から3つの基準点のそれぞれの角度を測る方法があります。


前者の方法は三角測量、三辺測量の応用的なもので、
正弦定理、余弦定理を上手く使って観測船の位置を測定する方法です。
上の図において、観測すべきものは、
距離L1とL2、若しくは角α、角βです。
距離L3は既知点同士なので、成果表からお互いの距離を取り出すことが出来ます。
L1とL2を測定した場合、角αや角βが分からないので、
余弦定理を変形して角αや角βを求めます。

L2の2乗=L1の2乗+L3の2乗−2×L1×L3×cosα
これを変形して、

cosα=(L1の2乗+L3の2乗−L2の2乗)÷2×L1×L3

同様に、

cosβ=(L2の2乗+L3の2乗−L1の2乗)÷2×L2×L3

角αや角βを測定した場合は、
正弦定理を使ってL1とL2を求めます。

観測船における角度γ=180°−α−β

L2/sinα=L1/sinβ=L3/sinγ

必要数値が計算で出せたら、既知点A及びBから船への方向角を求めて、
X、Y座標をそれぞれ求めます。

観測船のX座標=AのX座標+L1×cos既知点AにおけるT
=BのX座標+L2×cos既知点BにおけるT

観測船のY座標=AのY座標+L1×sin既知点AにおけるT
=BのY座標+L2×sin既知点BにおけるT

なお、非常にくどいようですが、
いきなりこのページをご覧になられた方のためにまたまた書きますが、
測量に使う平面直角座標は一般の数学と異なり、X軸が縦軸、Y軸が横軸になっています。


一方、後者の方法は円の性質を利用します。
円の性質は色々あるのですが、
ここでは二つの性質を使います。

性質1
円周上の異なる2点(図ではA、B)から円の中心を結んだ線でなす角(中心角)は、
円周上の異なる2点(図ではA、B)から円周上のもう一点を結んだ線でなす角(円周角)の2倍である。

性質2
円周上の異なる2点(図ではA、B)が固定されている場合、
円周上のもう一点はその2点に重ならない限り、
どの位置でも円周角はすべて同じ値になる。

手順として、船において角αと角βを観測します。
(トランシットやトータルステーションは揺れる船上では使えないので、
六分儀や電波を使います。)
既知点A,Bは固定されているので、船の位置が円周上のどこにいても、
円周角がαの場合、中心角は2×αになります。
既知点A,Bの長さは成果表より分かるので、
そのA,Bを2等分した位置の点M1から円の中心O1の長さは、
角AO1M1が中心角を2で割ったαなので、
AからM1の長さ÷tanαで求められます。

同様に、M2からO2の長さは、
BからM2の長さ÷tanβで求められます。

故に船の位置は既知点A,Bを通る中心がO1の円(円座標)と、
既知点B,Cを通る中心がO2の円が交わるところだと分かるわけです。

2、水深測定


水深の測定は色々方法があります。
浅ければロッドを使うことが出来ますが、
少し沖で行なう場合は先ず海底に届かないので、
ロープを結んだレッド(錘)を使います。
レッドを海底に沈めて、
それに結んだロープの(海水に浸かった)長さがどのくらいかを測定します。
ただ、レッドを使う場合、船をあまり動かさないようにしなければならなく、
波が荒い時は観測誤差を伴ってしまいます。
また、ロープは海底に対して垂直にするようにしないと、
誤差が大きくなってしまいます。
それ以外にもレッドが海底に沈むまで時間がかかると言う欠点もあります。

確実な方法は電波を使うことで、
音響探査機から発した電波が海底に反射して戻ってくるまでの時間を測定します。
電波を使った場合の水深は、
海中の電波の伝播速度×測定時間÷2で求められます。
2で割るのは、電波を往復時間で測っているからです。
海中の電波の伝播速度は音響探査機の仕様により確認します。

なお、他の手順に「ダイバーの方に測ってもらう」
と言うものも一応規定されているのですが、
ダイバーの人件費等を考慮すると、
測量士、測量士補自身がダイバー歴を持っていて、
自身でダイバーが出来る限りでないとコストがかかってしまいます。
(少なくともこのサイトの作者はカナヅチです。)

3、潮流観測

潮流観測は、海流の観測と波の観測があります。
海流の流れは河川測量と同じく、
うき、びん、板などを実際に流して調べます。
ただ、海流の速度は海面と水中で速度が異なることなどから、
うきなどは使わず、流速計での測定が一般的になっています。


一方、波の観測は、波同士の間隔と、前の波から次の波が来るまでの時間を測ります。
その二つを測ればてんとう虫公式で波の伝播速度を求める事が出来ます。

波の伝播速度=波の間隔L÷前の波から次の波が来るまでの時間t

北極星を使った方位角観測

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