地図の経緯度計測

地図学や測量学では経緯度計測が非常に重要な意味合いを持つのですが、
一般の地図利用者はあまり経緯度計測に馴染みが無いと思います。
道路地図や住宅地図などの主題図では経緯度の表示をしていない事が多く、
経緯度を意識して地図を見る人は殆どいないと思います。
特に国内の大縮尺図では経緯度の変化が細かい数字になるため、
経緯度数値では位置関係がとてもつかみにくいです。
また、国土地理院で公開しているデジタル地図は、
ダブルクリックしただけで経緯度が表示出来るため、
ますます経緯度計測の重要性が薄れている昨今です。
ただ、ハイキングで遭難した際、位置関係を調べる時など、
「いざと言う時」は非常に重要になってくるので、
知っていて損はないと思います。



経緯度計測の前の大前提なのですが、
計測を行なう地図は「経緯度表示がされている地図」でないといけません。
「そんな当たり前のこと言うな!!」とおっしゃる方がいると思いますが、
地図を購入する時、「うっかり失念」してしまい、
後で返品交換の二度手間をしてしまう方が多いようです。
経緯度表示されていない地図が多いことを知っておきましょう。

1、度数法の単位

経緯度は度数法と言う角度の単位で表示されています。
(何で角度で表示されているのかは、
地図のページ4の「地図投影とは1」をご覧下さい。)
度数法は小学校の算数から出てくる○○度(90°、45°など)と言う単位で、
直角が90度、半円が180度、一周の円が360度と言うのはどなたでも知っていると思います。
しかし、高校の解析学まで勉強しても「度」以下の単位は出てきません。
そのため、文系の方や理数系でも土木・工学関係などを専攻しなかった方は、
「度」以下の単位を知らないかと思います。
「度」以下の単位は「分」と「秒」で表示され、
1度の60分の1が1分、1分の60分の1が1秒になっています。
日本国内の大縮尺図の場合、「度」だけの計算ではアバウト過ぎて役に立ちません。
そのため、計算は最低でも秒単位まで行ないます。
ただ、気をつけなければいけないのは、
度数法の単位が時間の単位と同じように60進法になっているため、
10進法感覚で計算してしまうと間違えてしまうと言うことです。

2、経緯度計測

経緯度計測は単なる比の計算なので微分・積分の知識は必要ありません。
ただ、度数法を使うため、関数電卓や表計算ソフトなしで計算するのはきついと思います。


例として上の地図の赤い点の経緯度を計測するとします。


左図郭または「経度の左目盛」から計測する位置までの長さと、
計測する位置から右図郭または「経度の右目盛」の長さを測ります。
同じように下図郭または「緯度の下目盛」から計測する位置までの長さと、
計測する位置から上図郭または「緯度の上目盛」までの長さを測ります。
図郭または・・・と書いたのは、
平成15年図式の地形図から「図郭=経度・緯度の線」ではなくなったためです。
なので、その地図の図式によってどこが経緯度の目盛か注意しなければなりません。
なお、比の計算なので、
測る長さの単位はセンチメートルでもミリメートルでもフィートでもヤードでもなんでも構いません。
ただ、単位は揃える必要があります。


後は計測する位置の上下左右の長さの比率から経緯度を求めます。
比率計算を元にすると日本の場合(東経・北緯)、

経度=左の経度+(右の経度−左の経度)×(左の長さ/左の長さ+右の長さ)

緯度=下の緯度+(上の緯度−下の緯度)×(下の長さ/下の長さ+上の長さ)

になります。

先の例を代入すると、

経度(東経)=139度26分15秒+(139度30分00秒−139度26分15秒)×(35p/35p+21.5p)
=139度26分15秒+0度03分45秒×0.6195
=139度26分15秒+0.03871875
=139度28分34.3秒

緯度(北緯)=35度45分00秒+(35度47分30秒−35度45分00秒)×(37.5p/37.5p+9p)
=35度45分00秒+0度02分30秒×0.8065
=35度45分00秒+0.03360215
=35度47分0.97秒

となります。

上の計算した経緯度は西武鉄道所沢駅の位置なのですが、
国土地理院公開のデジタル地図で当該経緯度を検索すると、
300メートル程南東にずれてしまいます。
これは、紙の地図の誤差(伸縮、計測誤差)とデジタル地図の誤差、
及び、日本測地系と
世界測地系(デジタル地図はこちらを使っている)の誤差があるからです。



〜おまけ・弧度法〜

度数法は60進法のため、計算がややこしくなります。
また、計算によっては答えの数値が大きくなりすぎてその後の計算がしにくくなる場合があります。
今は関数電卓や表計算ソフトがあるので特に不便は無いのですが、
手計算をやっていた頃は度数法が原因で計算間違いをすることが多々ありました。
そのため、複雑な計算をする場合は度数法でなく弧度法と言う方式を使うことがあります。
弧度法の単位はラジアン(rad)で、
扇形の半径と弧の長さが等しい角度を1ラジアンとしています。


扇形の弧の長さは、2×半径×円周率×(扇形の角度/360度)で求めます。
1ラジアンは扇形の半径と弧の長さが等しいので、
2×定数A(半径)×円周率×(扇形の角度/360度)=定数A(弧の長さ)になり、
扇形の角度=(360度×定数A)/(2×定数A×円周率)になります。
定数Aは約分出来るので、
扇形の角度=360度/(2×円周率)になり、
それを計算すると扇形の角度=57.29577951・・・になります。
つまり、1ラジアンは57.29577951・・・度と言うことになります。
そう考えると、360度は約6.28=2×円周率ラジアンになります。

地図の標高計測

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