地図の体積計測
地図では等高線や等深線などを元に体積を計測する事も出来ます。
体積を計算するのには、面積を計算しなければならず、
変形地の場合は結構厄介になります。
(ただ、土木関係者の方以外は滅多に体積計測を行なわないと思いますが。)
1、体積計算の基本式
立方体の体積は縦×横×高さで求めます。
ビルなどの建物で高さが分かっている場合は、
敷地の縦、横の長さを計測するだけで体積を計算する事が出来ます。
建物がガクガクになっている場合は、
全ページで出た方眼法などで面積をあらかじめ算出し、
それに高さを掛けます。
ただ、等高線などは正方形や長方形になっている事は先ず無く、
くねくねとした線になっています。
そのため、それを計算する前提として知っておきたいのが、
円錐の体積と錐台の体積の計算式です。
円錐は底辺の面積に高さを掛けてそれを3で割った(1/3を掛けた)数字が体積です。
円錐を適宜水平に切った台状の立体を錐台と言うのですが、
錐台は高さ/3×(上面の面積+√(上面の面積×底面の面積)+底面の面積)で求められます。
2、等高線、等深線の体積の計測方法
等高線や等深線を元に体積を出す方法は色々あります。
国土地理院発行の「地形図の手引き」では、
等高線ごとに円筒として計算する方法が載っています。
ただ、等高線の間隔が広いなだらかな傾斜地の場合、
誤差が多くなるため、適宜補助曲線を入れて計算します。
一般的には台形法、シンプソン法、錐台の積み重ね計算などが使われていますが、
何れも微小に分割して台形や錐台に見立てているので、
分割が荒かったり、小縮尺の地図で広範囲の計測を行なうと誤差が大きくなります。
また、各方法は積分を基にしていますが、
見立てる図形や係数が異なるため、
各方法の体積数値が完全に一致する事はありません。
なお、説明には下図の山の地図を使います。
山の頂上には大抵三角点があるのですが、
三角点の真位置は三角点記号の真ん中の点です。
a,台形法
面積計算で出た台形法を応用した方法で、
断面の平均を積み上げて計算する方法です。
山の断面は上の図のように三角形になっています。
それを等高線ごとに区切るとそれぞれ台形が出来上がります。
その台形を元に計算します。
それぞれの標高の台形公式を合計させると、
高さh×((面積A0+面積An)/2+(面積A1+面積A2+・・・+面積An-1))
と言う式になります。
上図の場合、標高100mから120mまで一気にこの式で計算できます。
なので、数値を代入すると、
10(等高線の間隔)×((10万+3万)/2+7万)
=1350000立方メートル・・・・(1)になります。
標高120mから頂上までは高さが異なるので別途に円錐公式で計算します。
3万×高さ5×1/3=50000・・・・(2)
(1)と(2)を合計します。
1350000+50000=1400000立方メートル
b,シンプソン法
体積計算でもシンプソン法が使えます。
シンプソン法の絶対条件は区分を等間隔にすることと、
分割する数を偶数にする事です。
10mの等高線で分けると、
上図は標高120mから頂上までが端数になってしまいます。
この端数分は別途錐台(円錐)公式で計算します。
シンプソン法は最初と最後に係数1を掛け、
あとは4、2、4、2・・・の繰り返しなので、
h/3×(y0+4×y1+2×y2+・・・+4×yn-1+yn)
となります。
これに数値を代入すると、
10/3×(10万+4×7万+3万)
=1366667立方メートル・・・・(1)になります。
標高120メートルから頂上までは、
3万×高さ5×1/3=50000・・・・・(2)
(1)と(2)を合計します。
1366667+50000=1416667立方メートル≒141万立方メートル
c,全て錐台(円錐)の公式を使って体積を求め、それぞれの値を合計させる方法。
それぞれ錐台(円錐)の公式で計算して、
それを合計します。
先の例図の場合、
10/3×(7万+√(7万×10万)+10万)=845553・・・・(1)
10/3×(3万+√(3万×7万)+7万)=486086・・・・(2)
5/3×3万=50000・・・・(3)
(1)〜(3)を合計します。
845553+486086+50000=1381639立方メートル≒138万立方メートル
シンプソン法と錐台の積み重ね計算は35028立方メートルの差がありますが、
大体140万立方メートルだと言う事が分かります。
3つの方法のうち、錐台の積み重ね計算が一番実際の数値に近くなりますが、
精度を上げるため分割を細かくすると計算が面倒になります。
逆にシンプソン法は分割が少なく掛ける重量(係数)が少ないと誤差が大きくなりますが、
精度を上げるため分割を細かくしても計算は比較的楽です。
台形法は両者の中間に位置します。
なので、要求精度や分割数などで3つの方法を適宜使い分けます。
3、点高法
そもそも体積の計算が面倒で誤差が大きくなるのは、
測る土地が正方形や長方形でないため、
面積の計測を完璧かつ正確に出せないからです。
そこで一般的に使われる方法が点高法です。
点高法は測る土地を適宜三角形に区切ってそれぞれの三角形の面積を求め、
それに標高の平均を掛ける方法です。
基準点や等高線上の任意の3点を選びます。
基準点や等高線上は高さが分かるので、
3点の高さも当然分かります。
3点の高さの合計を3で割って平均し、
面積を掛けます。
なお、三角形の面積は底辺×底辺に垂直な線の高さ÷2なので、
簡単に求められます(ただし縮尺と単位に注意)。
それでもう体積の計算はおしまいです。
点高法はその区域の標高0m(基準面)からの土の量(土量)を求める時に使われますが、
三角形の中に凹凸が沢山あると誤差が大きくなります。
そのため、3点を選ぶ時、なるべく三角形の中に激しい起伏が入らないようにします。
なお、必ずしも三角形にする必要は無く、
四角形に分けて計算する事も出来ます。
その時は3でなく4で割ります。
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