地図表現の種類

「地図」と一言で言っても多彩な表現方法があります。
地図の目的と、載せるデータの種類などを鑑みて表現方法を決めます。



1、線画


線画は地図の基本中の基本で、
線あるいは点などを使って表現します。
地形図や道路地図などを始め、
多くの地図に使われています。

2、ぼかしとけば

地形の起伏を表現する方法は、
色々あるのですが、
一般的にはぼかし(うんせん)とけば(うんおう)を使います。


こちらが「ぼかし」です。
裾部は暗く、頭頂部(山頂や尾根)に近付くほど薄くしていきます。
頭頂部は空白にします。


こちらが「けば」です。
串状の線を重ねて表現します。
裾部の線は太く、
頭頂部(山頂や尾根)に近付くほど線を細くしていきます。
そして、山の頭頂部は空白にします。
かつては地形図や国土基本図の崖記号で、
このけばが使われていたのですが、
スクライブ製図が一般的になった時に、
このけばを針(スクライバー)で彫るのが難しいと言うことで、
直線を使った今の記号に変更になりました。
けばを書く時は、筆圧で線の太さが変えられる柔らかい丸ペン先を使います。

で、ぼかしは別名「うんせん」、けばは別名「うんおう」と言うのですが、
漢字で書くと上の図の下の字になります。
(HTML上で書くとおそらく文字化けするので、平仮名にしています。)


ぼかしとけばは裾と頭頂部のコントラストの他に、
(擬似の)光を当てる方向が決まっていて、
必ず左斜め上から光が当たっていると仮定して表現します。
光に近い左斜め上を薄く(細く)、光に一番遠い右斜め下を濃く(太く)します。
一般的に日本の地図は上を北にして書くので、
「ありえねーっ!!太陽の位置!!」となってしまうのですが、
これを逆の位置にすると「山」が「穴」になってしまい(見えてしまい)ます。
そのため、地図関係で陰影を付けるときは、
必ず左斜め上から光を当てていると仮定します。

3、段彩、色区分


標高帯や土地利用、地質など、
同じ種類(データ)ごとに色分けをしていく方法です。
ちなみに標高帯は等高線や等深線を基準にして色分けします。
なお、色の変わりにトーン(模様)を使ったり、
色+トーンを使ったりします。

4、メッシュ


メッシュは意外と地図表現で使われる方式です。
地図を細かい格子状に分け、
データに見合った色を1区画に付き1色(または1トーン、1色+トーン)配します。
上の図はメッシュの区割りが粗いのですが、
メッシュの区割りを細かくすると、
より詳細なデータを得ることが出来ます。

5、ドット


量的なデータを点で表現する方法です。
点にデータの与件を与え、
データ量毎に地図上に点を入れていきます。
これがよく使われるのは上の図の人口分布図で、
学校教材用地図ではおなじみだと思います。

6、コロプレス


コロプレスは前のページ「地図デザインの基本」で出しましたが、
国、行政区画ごとに、
データに見合った色分け(またはトーン分け)をしていく方法です。
一見、「段彩、色区分と同じじゃないか」と思ってしまうのですが、
決定的な違いはデータ分級(前のページ参照)をしなければならないと言う点です。
分かりやすく説明しますと、土地利用図の場合、
「田」とか「畑」とか「住宅地」とか既に明確に区分されているので、
データを分級する必要はありません。
この場合は、「色区分」に該当します。
それに対し、人口や人口密度図などは、
0人と言うところもあれば数万人・数十万人と言うところもあります。
しかし、この間の数値は明確に区分されていません。
そのため、データを一定の数値毎に分ける作業が必要になります。
こうやってデータを分級したあと、色分けする方法を「コロプレス」と言います。
なので、色区分の場合、
それぞれの地図製図士がそれぞれ地図をデザインしてもさほど変わりは無いのですが、
コロプレスの場合、それぞれの地図製図士が行なったデータ分級ごとに
それぞれデザインが変わってしまうと言う性質があります。

7、流線


地域間の物や人などの流れの方向と量を線を使って表現する方法です。
量が多い場合は太い線、少ない場合は細い線を使います。
上の図は「航空路線と本数」の図ですが、
その他には「輸入と輸出の流れ」や「人種の移動」などによく使われます。
なお、流線を使う数値データはデータ分級する必要があります。

8、等値線


等値線の代表は、等高線と等深線なのですが、
ここで言う等値線はそれ以外の同じ数値同士を結んだ線のことを言います。
上の図のように同じ平均気温を結んだ図の他、
平均降水量、農作物の栽培北限・南限、花の開花日などに使われます。

9、図形


前のページで少し書きましたが、
データを強調するのに図形が使われます。
図形は目的などによって使い分けます。
例えば円の場合、量が大きいところは大きい円、
量が少ないところは小さい円を使います。
更にその円の内訳を表現したい場合は円グラフの要素を足します。
図形は重なってしまうことが多いのですが、
その場合は小さい図形を手前にします。

10、データの面積化


各行政区分や国の面積を人口や貿易量などで表現する方法です。
上の図の場合、A市の実際の面積は広いのですが、
人口が少ないため、人口の数値で面積を表すと小さくなってしまいます。
逆にD市は実際の面積は狭いのですが、
人口が多いため、人口の数値で面積を表すと大きくなります。
ただし、これを行なう場合は各行政区分や国の位置関係は、
実際の位置に近似するようにします。
なお、世界の人口をこれで表現した場合(2008年と仮定)、
中国やインド、アメリカがやたらに大きい面積になります。
貿易量の場合、アメリカやイギリス、日本、ドイツなどが大きい面積になり、
アフリカ各国は小さくなります。

地図の色彩

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