地図の色彩

地図は白地図のような色のない地図もありますが、
大抵は何かしらの色が付いています。
その色の使い方で地図の印象が大きく変わってきます。



1、電磁波と可視光線

電磁波とは電界と磁界の連鎖による電気や磁気エネルギー伝搬のことで、
その周波数の違いによって様々な呼び方があります。

名称 波長
電磁界 30km以上 家電製品や送電線の電磁波
電波(長波) 1km〜30km 長距離通信
中波 100m〜1km アマチュア無線・ラジオ放送
短波 10m〜100m アマチュア無線・短波放送
超短波 1m〜10m
極超短波 10cm〜1m テレビ放送(UHF・地デジ)
マイクロ波 1cm〜10cm 電子レンジ・携帯電話
赤外線 700nm〜1cm レーダー・レーザー・太陽光
可視光線 400nm〜700nm 太陽光
紫外線 10nm〜400nm 蛍光灯・太陽光
エックス線 1pm〜10nm レントゲン
ガンマー線 10pm以下
(一部エックス線と重複)
原子力爆弾から発する放射線
電磁波のうち波長が400ナノメートル〜700ナノメートルの僅かな領域だけが可視光線です。
この可視光線だけ人が見て色を感じることが出来る唯一の電磁波です。

※上の表見て「蛍光灯は可視光線じゃないか!!」
と思われる方もいらっしゃると思いますので補足説明しますと、
蛍光灯は蛍光灯内の水銀から発する紫外線が、
蛍光灯の管に塗ってある蛍光物質を通すことにより、
可視光線に変化する仕組みになっています。
そのため、蛍光物質を塗っていない蛍光灯は紫外線を放出するだけで光りません。

更に可視光線を大まかに分けると・・・、

それぞれの波長で感じる色が異なります。


赤の素材は赤の波長の光線だけが反射します。
人間はその反射した赤の光線を目で感じて「赤」と判断します。


白を感じた場合は全部の光線が反射しています。


黒の場合は全部吸収されて何も反射しません。


全部反射しても反射の光が弱い場合は灰色に感じます。

2、光の3原色

光の3原色は赤、緑、青(厳密にはやや青紫)で、
その光の組み合わせと光の強さで色々な色を感じることが出来ます。


3色の光の強さを変えることによって上記以外の色を出すことも可能です。

なお、このページを特にディスプレイ表示設定変更をしていない場合は、
背景がクリーム色に見えると思うのですが、
これは、赤、緑とやや光を弱くした青が光っている状態です。
文字の黒は殆ど光っていません。

余談ですが、かつて発光ダイオードは赤と弱い緑しかありませんでした。
そのため、赤と弱い緑と二つを光らせた橙しか光らせることが出来ませんでした。
現在は青の発光ダイオードが発明され、緑も強く発光するようになったので、
フルカラーで光らせることが出来るようになりました。

3、色材の3原色

色材の3原色は印刷インクの基本の色となっています。
色材の3原色は光の3原色の真逆で、
マジェンダ、シアン、黄色になっています。
3色をあわせると黒にはなりますが、
若干くすみがあるため、黒は別インクで使います。


なお、光の3原色のように光の光線を増やせば増やすほど白になることを加色混合と言い、
色材の3原色のように光の光線を減らせば減らすほど黒になることを減色混合と言います。

ちなみに、パソコンの場合、ディスプレイ表示は光の3原色、
プリンターで出力した印刷物は色材の3原色で色を表現しています。
そのため、「あれ?ディスプレイと印刷の色が異なるぞ!」と言うことが多々あります。
勿論、その他にも後述の色立体設定の違いや印刷用紙の材質の種類、
ディスプレイの種類などで双方のギャップが大きく出ることがあります。

4、色立体


色は心理的な色知覚の属性に明度、彩度、色相があるのですが、
その3要素をグラフにすると、上の図のような不思議な3次元グラフになります。
このグラフを色立体と言います。
この3要素の値を変えることによって、
違う印象の色になります。
例えば明度を上げると明るい色になり、
彩度を上げると鮮やかな色になります。
色相は色自体を変えます。

5、色の視覚効果

色は配色の仕方で同じ色が違った印象を受けることがあります。
これは網膜の処理によるものです。
色の視覚効果はこれを利用したもので、
いくつかの種類があります。
そのうち、地図で特に重要な効果は以下の通りです。

a,誘目性

人の目を引く色か色でないかと言うもので、
暖色系(赤や黄)は人の目を引く色で、
寒色系(緑や青や紫)は人の目を引きにくい色となっています。
道路地図等で、有名な観光名所などを赤字で表示しているのは、
誘目性を意識しているからです。

b,視認性

色には見えやすい色と見えにくい色があります。
黄色のような明度の高い色は色として認識がしにくく、
青のような明度の低い色は色として認識しやすい傾向があります。
そのため、黄色など明度の高い色を使う場合は、
明度の低い色と一緒に使う必要があります。
道路の警戒標識や踏み切りの遮断器が黄色の補色として黒を使っているのは、
視認性を向上させるためです。


道路地図の道路などで黄色を使う場合は、
道路の縁の色を明度の低い色にしないと、
道路として認識がしにくくなります。

c,進出色と後退色

色には前に出ているように見える色と、
後ろに下がっているように見える色があります。
前者を進出色、後者を後退色と言います。
赤と緑の場合、
赤が進出色で緑が後退色です。

道路地図で国道を赤、主要県道などを緑にするのは、
この進出色、退出色の視覚効果を使っているからです。

d,膨張色と収縮色

膨らんで見える色と縮んで見える色があり、
前者を膨張色、後者を収縮色と言います。
一般に暖色系が膨張色、寒色系が収縮色になります。
道路地図の国道が赤なのは、進出色と後退色の関係もあるのですが、
膨張色と言う特性も使っています。
赤にすることで国道が広く(太く)見えるのです。

6、色の印象

色にはそれぞれの印象があります。
下の例は極端すぎますが、
水部を青で表現した地図と、赤で表現した地図です。
青で水部を表現すると
普通に「水」があると分かります。
赤で水部を表現すると
「何これ?血が流れているの?」
と言う風になってしまいます。

地図の場合、自然地形は特に色の印象に気をつけなければなりません。
等高線をピンクで描いたりしてみると、かなり不自然です。

また、例えば果樹畑の記号を紫色にした場合、
「ぶどう園かと思って行ったらりんご園だったぞ!!」
と言う”お客さまの声”を受ける可能性が濃くなります。
誤解させるような色の採用はするべきではありません。

7、網点とモアレ

印刷の時、色の濃度を網点で表します。
これは印刷機がインク濃度を調整できないためです。
網点の間隔(網線数)を狭くするればするほど自然に近くなり、
網点の間隔を広くすると「点の集合!!」と言う風になります。
また、濃度は網点の大小で決まり、
網点が小さいと薄く見え、大きいと濃く見えます。
しかし、この網点を重ねる時重ね方が不適切だとモアレと言う現象が起きます。
モアレが起きると網点部に縞目模様が出来てしまい、
不自然にその模様が目立ってしまいます。
モアレを低減するには、
網点の並び(網線)の重ねる角度を30度間隔にしなければなりません。
色材の3原色と黒で印刷する場合は、
マジェンダ15度、黒45度、シアン75度、黄色90度と決まっています。
シアンと黄色の間隔は15度で狭いのですが、
これは黄色が薄いのでモアレが起こっても目立たないからです。
ただし、3色以下で印刷する場合は黄色も含めてすべて30度間隔にします。

地図の距離計測

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