地図製版と印刷

製図作業が終了したらいよいよ製版と印刷に入ります。



1、ポジとネガ

今はデジタルカメラの時代なので、
ポジとかネガとか言ってもピンと来ないのですが、
ポジとは明暗部分が一致している版のことで、
ネガとは明暗部分が逆になっている版のことを言います。
※地図には濃淡はないのでその説明は割愛させていただきます。

〜例〜

完成品がこういう茶版だった場合・・・、

こちらがポジ
こちらがネガ

ポジからネガまたは、ネガからポジに変えることを「反転」と言います。
製版するためにポジの版は一旦ネガに反転する必要があります。
インキング製図の場合は図面がポジなので、
ネガに反転する作業があります。
一方、スクライブ製図の場合は最初からネガなので、
反転する必要はありません。
コンピュータグラフィックス製図の場合はネガフィルムを出力します。

2、サープリント

ポジの版(フィルム)の場合、
黒版、茶版、青版、注記版・・・など
それぞれの版をぴったり重ね合わせれば全体像が見えるのですが、
ネガの版(フィルム)の場合は下に重ねた版が見えないので、
それぞれの版をぴったり重ねても全体像が見えません。
スクライブ製図の場合、最初からネガなので、
実際それぞれの版を重ねた場合どうなるのか分かりません。
そこで、サープリントと言うのを行ないます。
サープリントとは、透明なフィルムベース(マイラシート)に色毎に焼付けしたものです。

3、ピンホール

ネガに反転する時、元の図面にゴミが付いていると、
ポツポツと小さい透明な点がネガフィルムに出来てしまいます。
それをピンホールと言います。
製版する前にピンホールを修正(ピンホール止め)する必要があります。
ピンホール修正は目止め剤、または不透明(オペーク)剤を使います。

4、製版

ネガフィルムに反転し、ピンホール止めをした後は、
製版になります。
製版はPS(Presensitizedのことで、プレイステーションのことではないですよ!)版に
多重焼で焼き付けます。
PS版とはアルミ板にあらかじめ感光剤が塗布されている版のことを言います。
多重焼するのは同色の色でも実線の版や網点の版など複数の版があるからです。

上から光を当てる。
ネガが光を遮断/通過させる。
光が通過した部分だけ
下のPS版の感光剤が
反応する。
マスク版の場合は、
マスク版とPS版の間に
網点などのスクリーンを挟む。

焼付けが終わったら、PS版に現像液を塗り、現像して版(平版)を完成させます。

5、校正刷

製版したら即本印刷・・・と、言うわけには行かず、
必ず1回以上の校正刷を行ないます。
校正刷とは平たく言えば試し刷りのことです。
校正刷をしたあと検査を行い、不具合や欠陥、ミスなどを修正します。

6、地図印刷

雑誌などのカラー印刷をよく見ると、
使っているのはマジェンダ、シアン、イエロー、ブラックの既定の4色だけで、
あとはその4色の色の比率で他の色に見せかけているのですが、
地図の印刷の場合は、
印刷で使う色をあらかじめ調合して作ります。
(ただし、これはあくまでも国土地理院の地図の話で、
一般の道路地図等は四原色印刷が普通です。)
地図の印刷は一般的な凸版印刷ではなく、
平版印刷で行なっています。
平版印刷は凸版凹版印刷のような版の凹凸で印刷するのではなく、
水と脂の反発作用を使って印刷するものです。
利点は印刷のムラが少なく、
密着度が高いため、カスレや汚れが起こりにくいことです。
ただ、通常の平版印刷のように地図の平版印刷をしているのではなく、
歪みなどが出来ないよう、
機械の回転速度を遅くして印刷しています。
また、用紙も伸縮が少ない特別な用紙を使い、
湿度の調整などにも気を配る必要があります。
(用紙が伸縮してしまうと地図の誤差が大きくなるため。)

地図の仕上げ作業

川柳五七の地図のページ5へ戻る

川柳五七の地図のページトップへ

たわたわのぺーじトップへ