CG製図法の概略

コンピュータグラフィックス製図法は、
今までインキング製図やスクライブ製図で書いてきた地図を、
コンピュータでやろうと言うものです。
コンピュータやソフト、周辺機器の導入には多大な初期経費がかかりますが、
地図製図士削減による人件費コストの削減および、
製図にかかる時間の削減が出来、
データの加工、編集、分析が容易に出来る利点があります。
ただ、問題点もあり、
地図製図の素人が製図に関わることが可能になったことで、
地図製図のセンスが足りない地図が出来てしまう危険性があります。
今後はその点の改良と人材育成が必要かと思います。



1、GISとは

コンピュータグラフィックス製図法をやるのに最初に出てくる言葉で
GISと言うのがあります。
GISとは(Geographic Information System)の略で、
「地図情報システム」のことです・・・が、
地図製図士の私でも何言っているのか分かりません。
なんで、こんな言葉を作ったのかと言うと、
この言葉が出来た当時(1990年代後半)、
コンピュータ化のことを「情報化」と言っていたからです。
平たく言えば、
「今まで手作業でやっていた地図製図と地図情報管理をコンピュータでやろう!」
・・・と言う意味でたいした意味はありません。
用法としては、手作業とコンピュータ利用との区別で使うことが多いです。
なお、GISのためのソフトを「GISソフト」と言います。
なお、GISと言う略語は紛らわしく、
GSI(国土地理院のこと)と勘違いしやすいです。
完全コンピュータ化するとGISは死語になるかも・・・?

2、計測基図

データを読み取るための原図のことを計測基図と言います。

3、プログラム作成・・・?

計測基図を用意したら工程的にはプログラム作成なのですが、
今は地図作成ソフトが充実しているので、
一からプログラムを組むということは殆どないです。
仮に組むとしても、
専門のプログラマーが組むので地図製図士が組むことは稀です。
(余程の零細企業かプログラムが得意な地図製図士とかは別ですが。)
ただ、パソコンやワークステーションに
インストールやソフトの設定をしなければなりません。
なお、「ソフトの設定」は作る地図の図式設定なども含みます。

注意点として、専門のプログラマーがプログラムを組む場合、
「プログラマーはプログラムの専門であって地図製図の専門ではない」
と言うことを常に認識しなければなりません。
地図製図士は仕様などを細かくプログラマーに指示しなければなりません。

4、ラスタデータとベクタデータ

計測基図をコンピュータに取り込む方法は、
おおまかに2通りがあります。
一つはスキャナーを使って基図を読み取る方法と、
デジタイザやペンタブレットなどを使って基図をなぞっていく方法です。
スキャナーやペンタブレットはご家庭にある方も沢山いらっしゃるので、
説明は不要だと思います。
ただ、スキャナーなどは家庭用よりも高性能、
高解像度なのは言うまでもありません。
デジタイザは地図図面や土木図面などに使う機器で、
線をなぞりながらボタンをクリックすると、
線や点を座標上にプロットすることが出来ます。

なお、前者で取り込んだデータをラスタデータ、
後者をベクタ(ドイツ語で言えばベクトル)データと言います。
で、「ラスタデータとかベクタデータとはなんじゃい」と言うと、
ラスタデータはすべてを格子状の四角で現したデータのことで、
ベクタデータは各場所の頂点の座標値を元に描画したデータのことです。
なお、ベクタデータには、点(ポイント)、線(ライン)、面(ポリゴン)があります。

例えば計測基図がこのような図だった場合・・・、
(まあ、スキャナーで読み取っているのでこれだけでラスタデータなのですが・・・、
とりあえずアナログ図面と考えてください。)

(注・図は強調のためわざと大きいピクセルにしています。)
ラスタデータの場合こうなります。
なお、ラスタデータには色の情報も入っています。
欠点はピクセル(画素〜四角の大きさ)が荒いと画像のギザギザが大きくなることです。
また、拡大するとギザギザが目立ってしまいます。

ベクタデータは格子状の四角で表すのではなく、
点・線・面を使って現します。
拡大しても図がさほど荒くならない利点があります。
写真には不向きですが、地図などの線画には向いています。

5、図形編集

編集基図を読み取ったら、
製品用にコンピュータで編集加工していきます。
(読み取っただけではただのコピーなので、編集するのは当たり前ですが・・・。)

6、データ出力

「データ出力」と言うとなんじゃいと言う事になると思いますが、
要はDVDやCD、FDなどに保存したり、
プリンターで校正用印刷したりすることです。
(本印刷は後述します。)
で、校正用印刷ですが、
地図の場合、以下の3種類が主に使われます。

●a,インクジェットプリンター

まあ、説明の必要はないでしょう・・・。
このサイトをPCでご覧になっている方は殆ど周辺機器として持っていると思います。
紙にインクを吹き付けて印刷する機械です。
地図の場合、A0判も印刷できる大型のインクジェットプリンターを使います。

●b,イメージセッター

ラスタデータを高解像度でフィルムや印画紙に印刷する機械です。
データをイメージ変換し、レーザ光で感光印字します。

●c,静電プロッタ

紙に静電気を帯びさせ、
粉末トナーを吹き付けた後、
熱で定着して印刷する方法です。



「魅せる地図」ではディジタイザを使わない方が良い?

とある大手地図出版社の地図を見て、
「何じゃこりゃ!?酷い!!」と言う物がありました。
おそらく、この大手地図出版社は地図製図を下請け会社に出していて、
その下請けでは地図製図士ではなく、アルバイトやパートに適当にやらせているのだと思います。
あまりにも酷かったので、
ここではそれがどういうものか示すのと同時に、具体的にどうすればよいのかご説明します。


上の地図には鉄道線と水涯線がありますが、
兎に角、線がカクカクになっていて、滑らかさがありません。
こういうことになる原因は、ディジタイザで拾う点の箇所がアバウト過ぎるからです。
地図製図の基本中の基本で、
以下のものは線をカクカクにしてはいけないと言うものがあります。

1、鉄道の線路
鉄道は急カーブが曲がれないので(いきなりガクっとしたカーブの線形では脱線してしまいます。)、
カーブは滑らかな線になっています。
なので、線路がカクカクな線になると言う事はありえません。

2、高速道路や峠道(登山道は除く)
高速道路は安全に運転出来るよう、
路線測量を行い、単曲線や緩和曲線を用いて緩やかなカーブになるように設計されています。
そのため、高速道路では、
余程の住宅密集地でやむを得ない場合(インターチェンジやジャンクションに限る)
以外は必ず滑らかな曲線になっています。
一方、峠道はカーブが多く、カクカク描きがちですが、
そういう道路だと、ハンドルを思いっきり動かしても曲がりきれず、
切り返しを何度もしなければ通れないと言う事になってしまいます。
そのため、峠道もカクカクに描いてはいけません。
滑らかな曲線にすると描ききれない場合は、「総合描示(総描)」を行ないます。

3、自然地形
等高線や海や川の水涯線(水路、堤防など人工物が入る場合は除く)は、
人為的な意図がない限り、綺麗な直線やカクカクになるということはありません。
等高線の場合、カクカクにすると地形の形状が読図しにくくなります。

要は、インキング製図で「○頭回転烏口」を使って描く線は、
CG製図でもカクカクの線にしてはいけないと言うことです。


とは言え、ベクタデータは点と線の座標値だけでデータが軽いと言う魅力があるので、
ラスタデータを「使えない」若しくは、「使いたくない」と言う場合もあるかと思います。
なので、カクカクがタブーな線を描く場合は、
ディジタイザで細かく座標を拾うか、
ペンタブレットを使い、雲形定規又は自在定規をあてて綺麗に正確に描く事をお勧めします。

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