注記版の作成

1、印刷原図

インキング製図法とスクライブ製図法はそれぞれ色ごとに版を作っていきます。
分かりやすい例だと浮世絵を想像していただければ良いと思います。
ただ地図の場合、色ごとの版だけではなく、注記版、マスク版なども作ります。
2万5千分の1地形図の場合、以下の版を作ります。

●a,注記版

地図の中に入れる文字を「注記」と言うのは、
地図のページ3で書きましたが、
実際注記を書いた版(または写植を入れた版)のことを注記版と言います。

●b,黒マスク版(スクライブ製図法)

黒の網点を指定する時に使います。
マスク版の詳細は次ページで説明いたします。

●c,青マスク版(スクライブ製図法)

青の網点を指定する時に使います。
青の網点と言えば広い川か海なので、
海ばかりの地図だと、殆どマスクを引っ剥がす作業になります。

●d,茶マスク版(スクライブ製図法)

茶色の網点を指定する時に使います。
国道に使うので、上手くマスクをはがすのに苦労します。

●e,黒版

黒の地図記号に使います。
都市部だとこの黒版を書くだけでものすごい時間がかかります。

●f,青版

線状になった河川や用水路、田記号などに使います。

●g,茶版

等高線や地形記号などに使います。
滑らかな等高線を描くのに苦労します。(特にスクライブ製図法)

以上の版を十字線(トンボ)で合わせます。

2、字高割

地図のページ3で字隔、字大、字列などの説明をしましたが、
実際、それらの大きさ、間隔を指定することを字高割(じこうわり)と言います。
注記を入れる場所を決め、
決まったら字高割テンプレートで字大、字隔、字列などを指定します。



3、注記の描画

字高割で字の大きさ、注記を入れる場所が決まったら、
注記版に注記を書いていきます。
(ただし、写真植字の場合は不要です。)
なお、前、ちょろっと言いましたが、
「注記が上手く書ける人は一人前の地図製図士」と言われていて、
注記を書くのには技術の他、センスが必要です。

4、永字八法


注記を上手く書くにはひたすら色々な字を何度も書いて練習するしかないのですが、
ポイントを抑えるのには「永遠」の「永」の字を使うのが最適とされています。
これは「永」の字には字の原則となる八法則が入っているからです。
図の字はコンピュータの明朝体なので、
地図用文字とは違うのですが、
ポイントは角の部分を鋭く書くことです。
でないと、印刷した後、つぶれてぼやっとした感じになってしまうからです。
ただ、注記の字大が小さい時は別です。
また、全体的に字のバランスを考える必要があります。
点が大きかったり、はらいがおおきかったりすると見栄えが悪くなります。

なお、等線体(ゴシック体)は、明朝体より難しく、
字のバランスだけで見栄えが決まってしまうので、
書くとき注意が必要です。
また、角は角と分かるように書きます。

5、注記の原則と例外

注記は基本的に略字で書くことを禁止されています。
ただ、字大が小さい時で画数が多い漢字は横棒などを間引くことがあります。
「鷹」「龍」など。
これは、印刷した時、字がつぶれてしまうからです。
・・・で、当たり前ですが自己流は厳禁なので、
地図用文字の本などを見て正しい明朝体、等線体で書きます。

6、写真植字

注記は上で書いたとおり、高度な地図製図技術を伴うばかりでなく、
注記版の作成に余計な時間とコストがかかってしまうため、
スクライブ製図が出たくらいのときに写真植字(通称・写植)と言うのが登場しました。
(「今までなにクラシックなこと書いているんだよ川柳!」と言う突っ込みはなしで・・・。)
写真植字とは平たく言えばシールで、
あらかじめ文字が印刷されたストリップフィルムの膜をはがし、
注記版に接着液で貼っていきます。
ただ、注記を入れる場所を指定するため、
字高割は必要です。
また、写真植字を注文する時注意が必要で、
字大(写真植字書体級数)などを正確に注文しないと、
買いなおしになってしまいます。



スクライブ製図法の仕組み

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