インキング製図法の道具2

5、直線烏口(ちょくせんからすぐち)


真っ直ぐな線を書くときに使います。
漫画家の方は普通に「烏口」と言っていますが、
地図製図士は他の種類の烏口も使うので、
「直線烏口」と言っています。
何で烏口と言うのかはご察しのとおり、
先の形がカラスの口に似ているからです。
地図は最初、図郭線(地図の外枠)を書くのですが、
そのときこの直線烏口を使います。
また、鉄道の線路(JR線の旗竿は除く)を書くときも直線烏口を使います。
これは、鉄道の線が太く、丸ペンだと着墨不足になるからです。
太さの調整は烏口の先にあるねじを緩めて調整します。
直線烏口は普通鋼とハイスピード鋼があります。
「ハイスピード」と言うとなんだか製図スピードが速くなるように思われてしまいますが、
そういう意味ではありません。
違いは普通鋼がやわらかく、ハイスピード鋼は硬くなっていることです。
硬いハイスピード鋼は烏口の磨耗が少ないので、
烏口を砥ぐ回数が少なくて済みます。
砥ぐ回数が少なければ、砥ぐ時間分短縮できると言うわけです。
ただ、「ハイスピード鋼は硬い」と言うのは長所でもあり、短所でもあります。
それは、ハイスピード鋼は硬いので、割れやすいと言うことです。
普通鋼の烏口は床に落としても欠けたりしにくいのですが、
ハイスピード鋼を床に落とすと先端が欠けてしまい、砥ぎなおしになります。
そのため、扱いは慎重にしなければなりません。
また、もう一つ短所があり、ハイスピード鋼は値段が高いと言うことです。
普通鋼は2000円前後で買えますが、
ハイスピード鋼は安いのでも7000円くらいします。

6、単頭回転烏口(たんとうかいてんからすぐち)


単頭回転烏口は、軸が回転する烏口です。
踊るようにくねくねした線が書けるので、
主に等高線を書くときに使います。
上のねじを固定すると直線烏口としても使えますが、
その使い方は稀だと言えます。
また、直線烏口と同様、烏口の先にあるねじを緩めて太さの調整をします。
ただ、この烏口、多分欲しいと思っても特注になると思います。
コンピュータグラフィックス製図が一般的になった現在、
こんな烏口を使う人はいないからです。

7、双頭回転烏口(そうとうかいてんからすぐち)


しくみは単頭回転烏口と同じですが、
烏口の先が2つあるのが特徴です。
2本平行のくねくねした線が書けるので、
主に峠道などを書くときに使います。
ただ、この烏口は一人前に扱えるようになるまで時間がかかります。
ちゃんと垂直に立てて線を引かないと平行にならないからです(特に急曲線部)。
しかも、調整を間違えると2本の線の太さがバラバラになることもあります。
太さの調整は烏口先端の両側にあるねじを緩めて調整します。
平行の間隔は、2本の烏口の先の間にあるねじで調整します。
やはり、上のねじを回すと固定ができ、双頭直線烏口で使えます。
これはたまに使うことがあります(JR線など)。

8、スプリングコンパス


地図記号など、円を書くときに使います。
原理は普通のコンパスと一緒ですが、
先端は烏口なので、綺麗な円を書くのは至難の業です。
しかも地図記号の円は小さい円なので、なおさら難しいです。
太さの調整は烏口脇のねじで調整します。
円の半径は、針と烏口の間にあるねじで調整します。
これは使う人がいるのかインターネット通販でも販売されています。

9、砥石


烏口はそのままで使うと、
一番細い線で調整しても線が太くなってしまいます。
図郭線は1号線(0.1ミリメートル)なので、
それ以下の細い線が書けるまで、
砥石で砥いで烏口の刃先を薄くする必要があります。
(烏口の刃先で手の皮が切れるほど薄く砥ぎます。)
また、烏口は消耗品なので、磨耗した場合は砥ぎなおしになります。
漫画家の場合は、烏口が磨耗すると殆ど使い捨てにしていると思いますが、
地図製図士はハイスピード鋼など高い烏口を使っているので、
そうそう捨てたり出来ません。
砥石は包丁などを砥ぐ砥石と違ってオイルストーンを使います。
そのため、砥石には水でなくオイルをつけます。
これは、水で砥いで刃先が錆びるのを防ぐためです。

10、墨壺


使うインクを入れておくものです。
小さい円にインクとインクさし、
大きい楕円には水で浸したスポンジや海綿などを入れます。
丸ペンの場合、スポンジ・海綿で固まったインクを落としたあと、
ちょんとインクをつけます。
烏口の場合は、インクにインクさしを入れ、
烏口の刃先の間にインクをちょんとさします。

注記版の作成

川柳五七の地図のページ5へ戻る

川柳五七の地図のページトップへ

たわたわのぺーじトップへ