地図製図の種類

1、地図製図とは

地図製図とは、写真測量や平板測量(前述)で作った測量原図を、
製品化するため、図式にのっとって綺麗に製版用の図面を作ることです。
写真測量や平板測量は測量士が行う仕事ですが、
地図製図は地図製図士という専門の職人が行うのが基本です。
地図製図はインキング製図法、スクライブ製図法、
コンピュータグラフィックス製図法の3種類があります。

2、インキング製図法

極めて原始的な製図法で、ケント紙に藍色で焼き付けた測量原図を元に、
インクで製図していく方法です。
昔はケント紙に直接製図していたのですが、
これでは、製図段階で修正をしたい場合、削刀(さくとう・後述)で、
焼き付けた測量原図も削ってしまうので、
極力製図ミスをしないよう神経をとがらせなければなりませんでした。
しかし、後に透明のフィルムベースが開発され、
焼き付けた測量原図にフィルムベースを乗せ、
そのフィルムベースに製図する方法に変わりました。
これなら、修正したい時は、フィルムベースの方を削れば良いだけなので、
焼き付けた測量原図に傷が入ることがなくなり、
スムーズに製図が出来るようになりました。

昔はこの方法しか製図法が無く、一般的に使われていた製図法ですが、
今ははっきり言ってインキング製図で作った新しい地図はないと思います。
使っても、コンピュータグラフィックス製図で微修正するときに使うくらいだと思います。

3、スクライブ製図法

我々地図製図士にとっては「魔の製図法」と呼ばれていて、
この製図をやると、確実に視力が低下します。
しかし、インキング製図法に比べ、綺麗に確実に製図が出来、
しかも多色印刷も可能です。
スクライブとは「刻みつける」と言う意味で、
スクライブベースを針で削って製図する方法です。
または、網点部分などは、ベースの表面をはがす方法を使います。
製図工程はスクライブベースに測量原図(素図)を焼き付けて、
それを元に、スクライブベースの表皮の部分だけを針で削って製図していきます。
スクライブ製図をするデスクは、天板がガラスになっていて、
その下に蛍光灯があります。
表皮を削ると蛍光灯の光で削った部分が光るので、
どこを製図したのが分かります。
(しかし、それが視力低下の原因なのですが・・・。)
スクライブ製図は、印刷色ごとにベースが必要で、
多色にするほどスクライブベースが必要です。
また、そのほかに注記版という、
写植(いわゆる文字の透明シール)文字を貼り付けた版も必要です。
浮世絵のように何枚もベースが必要で、
それを各ベースぴったりに合わせなければならないので、
結構面倒な製図方法です。
ただ、つい最近までの地図は殆どこの製図法でした。
スクライブ製図法の最大の欠点は、修正が上手くできないことで、
スクライブ製図用の修正液は不完全な出来のまま改良されませんでした。

現在でも国土地理院の地図の他、
市販の道路地図もスクライブ製図で作った地図が残っていて、
その地図を修正するには従来どおりスクライブ製図を使います。
ただ、コンピュータグラフィックス製図が一般になった現在では、
新規にスクライブ製図法で地図をつくることはなくなりました。

4、コンピュータグラフィックス製図法

文字通り、CGで地図を作る方法です。
今は殆どこの製図法です。
また、新規に作る地図は100%CG製図です。
測量原図をディジタイザと言う読み取り機械でなぞっていく方法が一般的で、
地図の製図は、地図製図ソフトを使います。
地図製図ソフトは会社によってまちまちですが、
一般的にはCADを使います。
ただ、この方法は私が10年くらい前に実際にやったり、地図会社を訪問して見た方法で、
スキャナーやペンタブレットが普及している現在では、
測量原図をそのままスキャナーで読み取らせて、
製図ソフト(またはイラストソフト)で製図しているところも現在はあります。
(実際、私はそうしています。)
スクライブ製図のように何枚も版を作る必要が無く、
一画面ですべての地図ができてしまいます。
スクライブ製図より確実に綺麗に製図が出来、
修正も容易です。
また、製図にかかる時間も大幅に削減できます。
国土地理院の地図でなければ、
製図作業をアルバイトやパートにやらせることも可能です。
初期経費はかかりますが、今後はこの製図法が主流になると思います。

(一部でソフトを買うお金のない貧乏な会社は、
製図プログラムを組んでいるとか・・・。)

インキング製図法の道具1

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