平均計算

測量計算をする際、それぞれの既設基準点から新点を求めるわけですが、
必ずしも・・・と言うよりぴったり値がそろう訳ではないので、
平均計算を行い、値を平均化します。

平均計算は、簡易法と厳密法があり、
かつては計算が比較的容易な簡易法が用いられていましたが、
現在はコンピュータの普及により、厳密法が主流になってきました。



1、簡易法

簡易法と言うとなんか簡単に計算が出来るような感じがしますが、
厳密法に比べて「簡易」と言う意味で、全然計算は簡易ではありません。
簡易法もクソ難しい計算で、骨が折れます。
なお、以下の計算方法は三角測量をもとにしたものですが、
多角測量も考え方はほぼ同じです。
以下の計算方法説明は「それぞれ」の連発ですが、ご了承ください。

A,それぞれの既設基準点から新点の観測方向角や平面距離を今までの計算から取り出します。
また、既設基準点の座標値も成果表などから取り出します。

B,Aの値から逆に新点からそれぞれの既設基準点の方向角を計算します。

Aの与点1の観測方向角±180°=T1

T1+新点でのそれぞれの既設基準点方向の観測角=
T2i<仮定の新点からそれぞれの既設基準点への方向角>

C,T2iの値を修正します。

T2i+Z=T2i´<修正した新点からそれぞれの既設基準点への方向角>

Z=1/方向数×(それぞれの既設基準点から新点への観測方向角の合計
−新点からそれぞれの既設基準点の仮定方向角の合計)

D,正反の観測方向角を平均させます。

Ti<それぞれの正反平均方向角>=
1/2×(それぞれの既設基準点から新点への観測方向角+T2i´)

E,それぞれの既設基準点の座標値から新点の座標値をそれぞれ計算します。

それぞれの既設基準点座標から計算した新点のX座標=
それぞれの既設基準点のX座標+それぞれの既設基準点から
新点への球面距離×球面から平面への補正係数×cosTi

それぞれの既設基準点座標から計算した新点のY座標=
それぞれの既設基準点のY座標+それぞれの既設基準点から
新点への球面距離×球面から平面への補正係数×sinTi

F,Eでそれぞれ求めた新点の座標値を平均して新点の平均座標値X2・Y2を求めます。

これは一般の平均計算を使います。
X2=(それぞれ求めた新点のX座標値×P)の合計/Pの合計
Y2=(それぞれ求めた新点のY座標値×P)の合計/Pの合計

P=正反方向の観測がある場合は1、片方向の場合は1/2です。
例えば、方向数が4方向ですべて正反方向の観測の場合、
Pは1で「Pの合計」は4になります。

これで計算したX2、Y2座標値と、
それぞれの既設基準点座標から計算した新点のX、Y座標の差が
制限以内ならここまではOKと言う訳です。

G,Fの平均座標値から方向角と球面距離を計算します。

tan(それぞれの既設基準点から新点への方向角)=
(Y2−それぞれの既設基準点のY座標)/(X2−それぞれの既設基準点のX座標)

上の式でそれぞれの既設基準点から新点への方向角を求めます。

新点からそれぞれの既設基準点への方向角=
それぞれの既設基準点から新点への方向角±180°

それぞれの既設基準点から新点への平面距離=
√((X2-それぞれの既設基準点のX座標)の2乗+(Y2-それぞれの既設基準点のY座標)の2乗)

球面距離は平面距離を「球面距離から平面距離への補正係数」で割ったものです。

H、新点の平均座標の平均2乗誤差を最小2乗法という法則を使って計算します。

最小2乗法とは天文学者のガウスが発見したと言うもので、
誤差の2乗したものの合計が最小になるような値を導く方式のことです。

座標Xの平均2乗誤差=±√((P×δX)の合計の2乗/((方向数−1)×Pの合計))

座標Yの平均2乗誤差=±√((P×δY)の合計の2乗/((方向数−1)×Pの合計))

δX=新点の平均X座標X2−それぞれの既設基準点から計算した新点のX座標

δY=新点の平均Y座標Y2−それぞれの既設基準点から計算した新点のY座標

これで出た平均2乗誤差がいわゆる「精度」と言うものです。
もちろん、この数値が±0に近ければ精度が高いと言う訳です。



2、厳密法

厳密法はかなり計算が面倒です。
一般的には測点平均の計算簿を用いて計算しますが、
もっぱらコンピュータで計算させるのが妥当です。
計算は観測方程式を用いて計算します。

計算例として三角測量のページで使ったこの観測例を使います。


A,計算に必要なデータを取り出します。

計算に必要なデータは以下の4つです。
成果表や水平角観測記簿から取り出します。

1、既設基準点(あ〜え)の座標値(x、y)
2、新点の計算した座標値(x、y)
3、既設基準点(あ〜え)から新点の観測方向角=t1
4、新点から既設基準点の観測方向角

B,それぞれの既設基準点及び、
計算した新点の座標値から仮の方向角を計算します。

それぞれのT´=tan-1((計算した新点のY座標値−それぞれの既設基準点のY座標値)/
(計算した新点のX座標値−それぞれの既設基準点のX座標値))

C,新点からそれぞれの既設基準点の観測方向角から、
それぞれの既設基準点から新点の方向角を求めます。

それぞれのt2=新点からそれぞれの既設基準点の観測方向角+180度
t2が360度を越える場合は360度を引く。

D,T´、t1、t2からLを出します。

それぞれのL2=それぞれのT´−それぞれのt2

それぞれのL1=それぞれのT´−それぞれのt1

それぞれのL=(それぞれのL1+2×それぞれのL2)/3

また、それぞれのL2の合計も合わせて出します。

E,平面距離を計算します。

それぞれの既設基準点から新点の平面距離(s)=
√((計算した新点のX座標値−それぞれの既設基準点のX座標値)の2乗+
(計算した新点のY座標値−それぞれの既設基準点のY座標値)の2乗)

F,それぞれのa,b及びそれぞれのdx1、dy1を出し、観測方程式を完成させます。

三角測量の場合、
それぞれのa=(計算した新点のY座標値−それぞれの既設基準点のY座標値)/それぞれのsの2乗
に−206265(1ラジアンを秒単位にしたもののマイナス)をかけます。

それぞれのb=(計算した新点のX座標値−それぞれの既設基準点のX座標値)/それぞれのsの2乗
に+206265をかけます。

なお、小数点以下の値は四捨五入します。

それぞれのa=それぞれのdx1

それぞれのb=それぞれのdy1

また、それぞれのdx1の合計とそれぞれのdy1の合計を出します。

それぞれのdx1+それぞれのdy1+それぞれのL=それぞれの−σ

それぞれのdx1の合計+それぞれのdy1合計+それぞれのL2の合計=それぞれの−σ2

−σと−σ2はプラスマイナスを反転させてσとσ2にします。

G,それぞれのP×a×a,P×a×b,P×a×L,P×a×σ,P×b×b,P×b×L,P×b×σ
を計算します。

(1)それぞれのP×a×a,P×a×b,P×a×L,P×a×σ,P×b×b,P×b×L,P×b×σ
を計算します。
ただし、P(重量)は3/2として計算します。
これは、両方向の観測の場合、
既設基準点から新点の観測方程式のPが1/2、
新点から既設基準点の観測方程式のPが2/2になるため、
両方向の観測の場合、合わせて3/2になるからです。

(2)そして、それぞれのaの合計、それぞれのbの合計
それぞれのL2の合計、それぞれのσ2の合計を使い、
同じくP×a×a,P×a×b,P×a×L2,P×a×σ2,P×b×b,P×b×L2,P×b×σ2
を計算します。
ただし、この場合のPは3/2ではなく、
−1/(方向数)で計算します。
上の図の例の場合、−1/4になります。

(1)と(2)を合わせて、
P×a×a,P×a×b,P×a×L(L2),P×a×σ(σ2),P×b×b,P×b×L(L2),P×b×σ(σ2)
の合計をそれぞれ出します。

H、Gの値を正規方程式に代入します。

P×a×aの合計dx+P×a×bの合計dy+P×a×L(L2)の合計=0・・・(1)
P×a×bの合計dx+P×b×bの合計dy+P×b×L(L2)の合計=0・・・(2)

(1)と(2)は連立方程式です。
この連立方程式を計算して、dxとdyの値を出します。

I、dxとdyの値をそれぞれのdx1とそれぞれのdy1にかけます。

dx×それぞれのdx1=それぞれのdx
dy×それぞれのdy2=それぞれのdy

J、それぞれのdxとそれぞれのdyとそれぞれのL1を合計させて、Pvv1を計算します。

それぞれのdx+それぞれのdy+それぞれのL1=それぞれのv1

それぞれのPvv1=それぞれのv1の2乗×P

ただし、Pは既設基準点から新点のため、1/2とします。

それぞれのPvv1を合計します。

K、それぞれのdxとそれぞれのdyとそれぞれのL2と−dZを合計させて、Pvv2を計算します。

dZ=(それぞれのdxの合計+それぞれのdyの合計+それぞれのL2の合計)/方向数

それぞれのdx+それぞれのdy+それぞれのL2+(−dZ)=それぞれのv2

それぞれのPvv2=それぞれのv2の2乗×P

ただし、Pは新点から既設基準点のため、2/2=1とします。

それぞれのPvv2を合計します。

L、Pvv1、Pvv2の合計を観測方程式の数−未知数の数で割り、
最小2乗法で最小2乗誤差を計算します。

平均2乗誤差m=±√((Pvv1+Pvv2)/(観測方程式の数−未知数)

両方向観測の場合、観測方程式の数は方向数×2になります。
上の図では4×2で8です。

未知数はX、Yと表定誤差の3つです。

M、dxとdyの値を計算した新点のX座標値及びY座標値に足して、
その値から方向角と平面距離、球面距離を求めます。

補正した新点のX座標=dx+計算した新点のX座標値
補正した新点のY座標=dy+計算した新点のY座標値

方向角の計算と平面距離の計算、球面距離の計算はくどくなるので省略します。



おまけ、サルでも分かる最小2乗法

私が測量の勉強をしたとき、
分からなくて苦労したのが最小2乗法なのですが、
冷静に考えるとなんてことはなかったりします。
ここでは超簡単な例を挙げて最小2乗法をご説明いたします。


測量士、院地木太郎(45)は基準点Aの測量をしました。
観測データを基に基準点AのXY座標を計算したところ、
Xに+2.0、Yに−2.0の誤差が発生したのですが、
院地木太郎は単純にXYの誤差を足して平均し、
平均誤差は±0にしてしまいました。
誤差があるのに誤差がないと偽って計算データを売ろうとしています。
さあ、これは大変です!!


誤差が±0になってしまうのは、
Xの誤差が+でYの誤差が−なのが原因です。
そこで、XとYの誤差を2乗してどちらもプラスにしてから平均します。
ただ、これだと誤差が実際の2乗分になってしまうので、
±√をつけるわけです。
院地木太郎のインチキは通用しませんでしたね。

GPS測量

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