多角測量
多角測量は従来の三角測量に変わって使われるようになった測量です。
三角測量と異なり、都市部の住宅密集地でも観測可能で人手は要りませんが、
観測地点が多くなるため、
何回もトータルステーションを据え付けることになります。
多角測量は別名トラバース測量とも呼ばれ、
精度の度合いは多角路線と言う観測路線の形によって決まります。
GPS測量が登場するまではこの測量が主体で、
かつての伊能忠敬もこの測量を使っていました。
三角測量と測量方法は異なりますが、
測量工程や道具などはほぼ同じです。
ただ、多角測量は測距機能が付加されたトータルステーションの方を基本的に使います。
トランシットを使った場合は距離の計測に鋼巻尺を使います。
1、多角測量の路線
上で多角測量の精度は多角路線で決まると書きましたが、
多角路線は色々な種類があります。
原則は既設基準点(一般に与点と呼ばれます)同士を結ぶ路線が設定されます。
既設基準点から他の既設基準点に結ばない路線に開放型と言うものがありますが、
これは精度が悪いのであまり用いません。
閉合型は同じ既設基準点を結ぶ路線で、開放型よりは精度が上げられます。
ただ、既設基準点が一つだけなので、
その既設基準点の精度が悪い場合は良い結果が得られません。
そのため、一般的には結合型が採用されます。
また、多角網と言うものがあり、3つ以上の既設基準点を結ぶ路線がこれにあたります。
代表的なものにY型、X型、H型があります。
出来れば多角網の路線交点(路線が交わっている地点)は一つの方がよく、
H型よりはY・X型の方が精度が高いです。
2、多角測量の内容
多角測量は既設基準点から順々に夾角と距離を測っていき、
座標上に多角点を決めていく測量です。
上の図で言えばブルーの角(ABCD)が夾角で、
距離は黒線の長さ(abc)です。
既設基準点「あ」においては、
角Aと距離aを測ります。
観測の仕方は三角測量と同じで、
右方向に測ったら望遠鏡を反転させて左方向に測ります。
それを3対回行ないます。(3級は2対回)
距離の方はトータルステーションの光波測距儀で測るのですが、
精度を上げるため2回測ります。
また、三角測量と同じく高さを求めるため、鉛直角の測量も行います。
夾角の測定と、距離の測定結果をもとに公式にあてはめて、
各点の座標値を求めていきます。
上の図の「い」の座標値は、
「い」のX座標=「あ」のX座標+(aの平面距離×cos方向角)
「い」のY座標=「あ」のY座標+(aの平面距離×sin方向角)
なお、方向角は座標北からの右回りの角度のことです。
既設基準点「あ」における「お」の方向角Oは成果表で既に分かっているので、
方向角Oに観測した角Aを足せば「あ」における「い」の方向角Pが出ます。
ついでに「い」における「う」の方向角は、
Pが錯角になっていることに注目します。
そうすると、B−(180度−P)で求められるのが分かります。
そのような要領で他の方向角も計算します。
それと、平面距離なのですが、
光波測距儀で測っている距離は斜距離のため、
斜距離を平面距離に直す必要があります。
〜aの距離の場合。〜
高度角=90度−((望遠鏡正位鉛直角−望遠鏡反位の鉛直角)/2)
球面距離=(aの斜距離×cos高度角の平均)/(1+H/地球の半径)
H=(「あ」の標高+「い」の概算標高)/2
「い」の概算標高=「あ」の標高+(aの斜距離×sin高度角)の値から、
器械の高さ、測標の高さを足し引きした値の平均。
球面距離の値が出た後、平面距離の計算をします。
平面距離=球面距離×距離の補正係数
距離の補正係数=
縮尺係数×(1+各既設基準点の平均Y座標の2乗/(2×地球の半径の2乗×縮尺係数の2乗))
なお、既設基準点の標高と座標値は成果表で分かります。
地球の半径は約6370Kmで、縮尺係数は0.9999です。
同じ要領で、「う」、「え」の座標値も求めます。
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