電車の車体構造って何!?その2

2−3、アルミ合金車

アルミ合金は色々種類があるのですが、
鉄道車両に使われるのは、主にアルミニウムに亜鉛とマグネシウムを合わせた、
7N01系合金が使われます。
アルミ合金は普通鋼より腐食に強く、細かい溶接・加工が出来、
それでいて軽いため、
鉄道車両には最適なのですが、
いかんせんアルミ合金自体が高額で、加工にもコストがかかるので、
どうしても軽量化が必要な新幹線車両や特急車両、
一部の鉄道会社以外はなかなか採用されず、
地味な存在でいました。
しかし、最近になって急速に技術発展したことと、
環境問題が叫ばれる中、リサイクル性に優れたアルミ合金が見直されたため、
アルミ合金車を選択する鉄道会社が増えつつあります。
昔はステンレス車と同じく台枠、柱などを普通鋼で造り、
外板だけアルミ合金にする製造方法だったのですが、
現在はオールアルミ合金車になっています。


アルミ車で使う7N01系合金はアルミ合金の中で一番丈夫なものです。
アルミ合金の板は金型に高温のアルミ合金を流し込み、
それを押し出すことによって造られた押し出し形材を使います。
そのため、あらかじめその車体構造にあった金型を造れば、
その形の板を簡単に造ることが出来ます。
シングルスキン構造の場合、
片面がフラット、片面に突起がある形材を使い、
フラットの方を外側に、突起がある方を内側にします。
内側に来る突起は柱に取り付ける部分になるのと同時に、
車体の強度を上げる働きがあります。
ダブルスキン構造は板の中心部の一部分が中空になるような金型で造ったものです。
中空部分は三角状の空間になっていて、
板を縦に切ってみると、ダンボールの箱のような断面になっています。
中心部の一部分を中空にする関係で、
従来のシングルスキンより厚い板になってしまうのですが、
強度はシングルスキンよりはるかに優れ、
なおかつ柱が不要になるので、
結果として製造コスト削減と、軽量化が出来ます。
また、ダブルスキン構造は2重板になるため、防音性も高くなっています。
近年、アルミ車は摩擦攪拌接合と言う、
二つのアルミ合金板を摩擦を掛けながら混ぜ合わせるようにする接合が確立されたので、
無塗装でも綺麗な側面に仕上げることが出来るようになりました。
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アルミ車の利点は成型のしやすさと、軽量化、
そして、腐食に強く、リサイクル性にも富んでいることです。
欠点は先ず第一にシングルスキン構造の場合、
接合部を中心に歪みが激しく、無塗装だと見栄えが悪いことです。
特に車両が古くなってくるとその歪みが酷くなるので、
余計見栄えが悪くなってしまいます。
それを誤魔化すため、
場合によっては塗装をすることがあります。
ただ、普通鋼車と違い、錆の侵食を抑える目的ではないので、
「錆止めを塗って更に丁寧に厚く塗装する・・・。」と言うことはせず、
ラッカーで吹き付けるだけで終わらせることも可能です。
しかし、ラッカー塗装だからと言っていい加減にやると、
塗りむらが出てしまいます。
しかも、ラッカー塗装は風雨に晒されることによって簡単に剥げてしまいます。
そのため、最近の車両はラッカーを使用せず、
通常の塗装をしたり、装飾テープで隠す方法が多くなっています。
一方、ダブルスキン構造は接合面が少ないので歪みが少なく、
見栄えもいいので、通勤車両を中心に無塗装が多く、
アクセントとして装飾テープを貼る程度にしている車両が多いです。
第二の欠点にやはり製造費が高いと言うことがあげられます。
アルミ合金自体の価格を下げるのは難しいため、
アルミ合金車両を主体にしている車両製造会社は、
内装をモジュール化して極力それ以外のところでコストを下げるようにしています。
第三の欠点にリサイクル性という面でまだ不透明なところがあることです。
リサイクル設計で造られたアルミ合金車はまだ今の所現役で、
一部の試作的車両以外有用性がまだ実証されていません。
リサイクル設計で造られたアルミ合金車が廃車になる頃は、
技術や仕様等が大きく変わっている可能性があるので、
その時になったら役に立たないと言うことも十分考えられます。
そして、第四の欠点に、ステンレス車と同じく、
事故による車体変形の修復が難しいことが挙げられます。

3、扉

車両と言えば入るための扉が必要ですが、
現在は「自動で扉が開くように」なっています。
「自動で扉が開くように」と言う表現をしたのは、
「自動扉」ではないからです。
扉の開閉は、車掌、または運転士、
ローカル線では乗客自身が自主的に扉開閉のスイッチを押すことにより可能になります。

列車の扉は引き戸、折り戸、プラグドアなど色々種類がありますが、
最近は引き戸が一般的になっていて、
通勤電車は両開き、特急車両やローカル線車両は片開きの採用が多くなっています。
従来の鉄道車両の扉の窓部分には段差があり、
それに手をついていると、扉が開いた時に戸袋に手を挟まれる危険があったため、
2枚重ね合わせた複層ガラスを採用し、段差を無くしています。
なお、複層ガラスは防音面や断熱面でも優れています。


扉の開閉は圧縮空気を使うのが主流です。
扉を開閉する時にプシューとか音がするのはそのためです。
昔は扇形歯車を圧縮空気で動かし、
それに繋がったアームが扉を引いたり押したりすることで扉を開閉させていました。
両開きの場合、引いたり押したりする扉は片側だけでよく、
もう片側の扉はお互いの扉を接続した引分ベルトが動くことによって、
一緒に開閉します。
最近は座席のバケット化などで座席下のスペースが使えないので、
扉開閉装置を小型化し、
扉の上だけに設けるタイプになっています。
圧縮空気の出し入れするシリンダーは片側の扉のみ接続されていて、
もう片側の扉はシリンダーに接続している扉側の引分棒と、
自身の引分棒をかみ合わせることによって、
一緒に開閉します。


最近はリニアモーターで開閉する扉も多くなっています。
この方式はリニア式鉄道と全く同じ原理で、
磁石同士の吸引反発を利用して開閉しています。
リニアモーター開閉式の扉は扉の上に可動子の磁石を、
上の装置には固定子である電磁石コイルを取り付けます。
固定子のコイルに流す電気の方向を連続的に変えると、
電磁石のNSが連続的に逆転するため、
可動子側の磁石がそれに吸引反発を繰り返して推進力を得ます。
リニアモーター式の扉は圧縮空気を使わないので、
静かな開閉になります。
また、扉の開閉のためにうるさいコンプレッサーを動かす必要がなくなります。
ただ、非接触の力で扉の開閉をするため、
こまかい微調整がしにくく、
扉が合さる時にお互いの扉が激しくぶつかってしまう欠点があります。
今後はこの点の改良が必要だと思います。

4、窓

車両の窓は固定窓と開閉可能窓があります。
固定窓は特急車両や新幹線車両で使われ、
窓ガラスが完全に固定されています。
特急列車は空調設備で室内の温度が快適に保たれているため、
乗客が任意で窓を開けることによって快適な室温が崩れないよう、固定窓にしています。
また、新幹線の車両などは高速で走るため、
乗客が不用意に窓を開けると、
列車の風圧で飛ばされたバラストなどが室内に勢いよく入り込み、
それに当たって乗客が怪我をする危険性があります。
そのため、新幹線車両は必ず固定窓にし、
窓ガラスも強化ガラスにしています。
一方、通勤車両などの一般車両は開閉可能窓が一般的です。
一時期、窓の保守省力化を目指してすべて固定窓の通勤車両を導入したことがあるのですが、
テロリストなどが異物を散布した時に全く換気出来ず、
被害が拡大する恐れが懸念されたのと、
「男性の体臭やポマード臭、女性の化粧臭がくさくても換気出来ない。」
と言う意見が相次いだため、
通勤車両は開閉可能窓を設けるのが通例になりました。


昔は下降窓が一般的で、
開けるときは窓止め錠を解除して、
下にドスンと落とすのが一般的でした。
しかし、下降窓だと雨天に開けたとき、雨が車内に入り込んだり、
窓の窓袋に雨が入り込んで車体が腐食してしまうため、
窓をユニットサッシ化して、窓を上昇して開ける方法に変わりました。
ユニットサッシは最初から窓枠の型が出来ているため、
車体側に特別な施行をする必要が無く、楽に窓が取り付けられます。
また、窓戸錠(今はストッパーと言うらしいです。)を受ける孔をいくつか設けることによって、
好みの高さまで窓を開けられるようにしました。
過渡期には色んなパターンに開閉出来るバランサー上げ下げ窓の列車が導入されました。
バランサーは窓を上にあげるときに軽くする働きがある他、
下まで窓が重力で一気に落ちないようにする働きがあります。
バランサーの張力は窓の重さと等しくするようにしてあります。
バランサーの張力が窓の重さより強いと、
窓を上げるつもりでなくても窓がずりずり上に上がってしまうし、
バランサーの張力が窓の重さより弱いと、
窓を下ろすつもりがなくてもずりずり下に下がってしまいます。
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メジャー(巻尺)を収納する時や掃除機のコードを収納する時、
ボタンを押すとジャーッと一気に収納されるのは日頃よく目にしていると思いますが、
これはゼンマイと言う螺旋状のばねが巻尺やコードを巻き上げているからです。
(余談ですが、「ゼンマイ」と言う用語はシダ植物の薇<ぜんまい>に似ていることから付けられました。
なお、ばねのゼンマイは漢字で書くと「発条」です。)
バランサーもそれと同じ仕組みで、
ゼンマイの張力によって窓を支えています。
なお、上下方向に余裕空間があり、左右方向には空間が無い場合は、
コイルばね式のバランサーを使うこともあります。
そして、最近多いのは一枚式の下降窓(一段下降窓)です。
「え?雨対策はどうなったの?」と思われると思いますが、
現在の車両は空調装置やそれに付随する除湿装置で室内が快適に保たれているため、
雨が入り込むのを承知でわざわざ窓を開ける乗客はいないと判断したからです。
また、車体はステンレス製やアルミ合金製になっているものが多く、
窓袋に雨が入り込んでも錆びる懸念がないからです。
一枚式の下降窓は重量がかなり重く、
従来のゼンマイやコイルばねのバランサーだと伸びてしまう可能性があるため、
油圧式バランサーを使うことが多いです。
油圧式バランサーはヨーダンパやアクチュエーターなどと同じように、
オイルの入ったピストンになっていて、オイルの圧力により、張力が保たれています。

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