蹴上インクライン

蹴上インクラインは京都市左京区(一部東山区)を通っていた船運搬用傾斜鉄道で、
全長582メートルの距離がありました。
インクライン自体の完成は明治23年で、
翌、明治24年にインクラインの動力源の電気を発電する、
蹴上水力発電所完成に合わせて運転を開始しました。
開通時はまだまだ船運が活発で、
人も物流も多く運んでいたのですが、
鉄道の開通で乗客が減り、
その後は主に物流中心になっていきます。
それも、自動車輸送が盛んになってくると減少していき、
戦後間もない昭和26年に廃止となってしまいました。
ただ、廃止から半世紀以上経過している今現在でも線路は残されています。
平成8年には国の史跡指定を受け、
最近は各メディアやSNSなどで取り上げられるようになったため、
多くの観光客が訪れる名所となりました。




京都市左京区の南禅寺入り口付近に線路らしきものがあります。


この線路はインクライン(傾斜鉄道)と言って、
かつては船を載せた車両が走っていました。


琵琶湖疎水は途中で蹴上水力発電所があり、
その部分は導水管に水が流れています。
そうすると船はその部分を通る事が出来ず、
船に乗(載)せた人や物は一旦降ろして乗り換える(載せ換える)必要があります。
そうした不便を解消するために造ったのがインクラインで、
インクラインの車両に船を載せることで、
人や物を船から降ろすこと無くこの部分を行くことが出来ます。


案内板では、傾斜15分ノ1と書かれているのですが、
これでは分かりにくいので、鉄道でよく使うパーミル(千分率)に換算すると、
1/15=x/1000
x=1/15×1000
x=1000/15
x=66.66666・・・・・・
約66.666パーミルだという事が分かります。
これは、かつての信越本線の碓氷峠区間最急勾配とほぼ同じです。
ちなみに角度に換算すると、
tan-1(66.666/1000)=3度48分50秒ほどです。


一見、写真の女性のようにまたがっている部分が軌間に見えるのですが、
そうではありません。


実際はこの部分が軌間です。
ものすごい広軌で、2540ミリあります。


インクラインの中程にかつて船を載せていた車両が置かれています。
現役時代はケーブルカーと同じようにロープによって、
左右の車両がつるべのように、
坂道を登ったり下りたりしていました。


台車は車体の割に小さい車輪を使っています。


最近、色々なSNS上に紹介されたせいか、
線路上を歩く観光客が沢山います。
特に桜の咲く頃には線路が桜のトンネルで囲まれるので、
多くの観光客が訪れます。


線路は結構へろっているので、
今、車両を走らせても脱線してしまうと思います。


蹴上水力発電所の導水管です。
途中インクラインの線路下を斜めに交差しています。


線路の末端部です。
上り勾配から下り勾配に切り替わり、
琵琶湖疎水の水の中に線路が消えます。


インクラインの線路盛土下に、
「ねじりまんぽ」と言う歩道用トンネルがあります。
このトンネルすぐ右手には、
京都市地下鉄東西線の蹴上駅1番出入口があります。


トンネルの扁額にはトンネル名ではなく、
四字熟語が書かれています。
三条通り側の扁額には、
右読みで「雄観奇想」と書かれています。
「素晴らしい景色では良いアイデアが浮かんでくる。」と言うような意味です。


トンネル内はねじれるようにレンガが組まれています。
これが「ねじりまんぽ」の由来です。
なお、「まんぽ」はトンネルと言う意味です。


こちらは南禅寺側の入り口です。
三条通り側の入り口よりやや傷んでいます。


こちらの扁額は色が褪せているだけで無く、
剥離もしているので読みにくいのですが、
「陽気発処(ようきはっするところ)」と書かれています。
「気持ちを集中すれば、どんなことでも実現できる。」と言った意味です。


南禅寺側から見たねじりまんぽです。
トンネルの向こうには三条通りを挟んで、
京都市地下鉄蹴上駅の2番出入口が見えます。
京都市地下鉄蹴上駅の2番出入口はねじりまんぽに合わせたのか、
レンガ風の外壁になっています。

鉄道話題・一覧表へ戻る

川柳五七の新電車のページトップへ

たわたわのぺーじトップへ