電車の車両形式って何!?その2
7、機関車の車両記号
機関車は輪軸の数で牽引力が異なるため、
輪軸数によって記号を分けています。
機関車の記号は二つの記号で成り立っています。
最初の記号は動力方式で、
一番古い蒸気機関車は無記号、
ディーゼル機関車は「D」、電気機関車は「E」になっています。
この「D」と「E」は全く説明する必要がないのですが、
小、中学生の方も見ているサイトなので、
一応書いておくと、「diesel」、「electric」の頭文字です。
次に軸数に応じた記号が付きます。
1軸からそのまま順にA、B、C・・・となっているのですが、
1軸車は常識的に考えられないので、
2軸のBから始まります。
なお、これはJRの場合であり、
機関車形式数が相対的に少ない、
それ以外の民鉄は軸数の記号がカットされている場合があります。
(上の表は6軸のFまでしか書いていませんが、最高8軸のHまであります。)
そして、電気機関車の車両番号ですが、
やはり各鉄道会社まちまちで一概に言えません。
ただ、電車、ディーゼル車と異なり、
機関車は1両単体で存在しているので、
ユニットを考える必要はありません。
主には形式、形状、用途などで分類されます。
〜主な分類〜
蒸気機関車の場合、※テンダー車かタンク車か。
電気機関車の場合、交流電化用か直流電化用か交直両用か。
その他、入替用、試作車、構内用、本線用、支線用、貨物牽引用、旅客車両牽引用など。
※テンダー車は石炭と水を載せる専用車両が付属している機関車です。
一方、機関車自体に石炭と水を載せている機関車をタンク車と言います。
8、客車の記号
客車に関しては記号の付け方が独特で、
重量+車両等級+用途の組み合わせになっています。
用途が複数有る場合は、用途の記号が2つ以上になり、
4文字以上の長い客車記号になる場合があります。
客車は先ず最初に積車重量が来るのですが、
22.5トンから5トンずつと、やたら細かく分かれています。
記号はそれぞれの意味の頭文字を当てたため、
法則性は無く、記号がバラバラで分かりにくいです。
なお、意味合いは以下の通りですが、
一部諸説あります。
コ=「小型」の「こ」
ホ=「ボギー」の「ぼ(ほ)」
ナ=「並」の「な」
オ=「大型」の「お」
ス=「少し大きい」の「す」
マ=「マキシマム」の「ま」
カ=「濶大(かつだい)」の「か」
次に車両等級ですが、
これは先のページで書いた通りで、
グランクラス車(一等車)が「イ」、グリーン車が「ロ」、
普通車が「ハ」になっています。
なお、荷物車や郵便車など人を乗せない車両は車両等級が省略されます。
最後に車両用途が来ます。
車両用途の記号の意味合いは以下の通りです。
用途が複数に渡る場合は双方の記号を入れます。
緩急車「フ」=ブレーキの「ふ」
食堂車「シ」=食事の「し」
展望車「テ」=展望の「て」
座席車「ザ」(通常は省略する)=座席の「ざ」
寝台車「ネ」=寝るの「ね」
荷物車「ニ」=荷物の「に」
郵便車「ユ」=郵便の「ゆ」
この中で、「この車両何?」と思われるのは、おそらく緩急車だと思います。
緩急車は平たく言えば車掌室のある車両を言いますが、
ただ車掌室があるだけでなく、
ブレーキや圧力計などを搭載している車両を言います。
そして、なんで「緩急車」と言うのかと言うと、
かつては全客車を通す直通ブレーキ管がなかったため、
緩急車でブレーキをかけたり緩めたりして、
車両のスピード(緩急)を調節していたからです。
ただ現在の緩急車のブレーキなどは、専ら緊急時のために搭載されています。
そして、意外なのは、荷物車と郵便車で、
双方とも貨車ではなく、客車扱いになっています。
これはかつて郵便と小包は、
「逓信省(後の郵政省、現在は弊サイト作者が勤めている日本郵便株式会社)」
と言う独立した国の省庁で行っていた名残で、
それだけ昔は郵便と小包が重要だったのです。
〜〜〜〜〜
さて、これを元に次の記号を考えてみます。
例題1「オロネフ」
例題2「スイテ」
例題1の答えは、「積車重量32.5トンから37.5トン未満のグリーン車で、
寝台と車掌室のある車両」です。
例題2は実際に大井川鐵道に存在する車両ですが、
答えは「積車重量37.5トン以上42.5トン未満の一等車で、
展望デッキの有る車両」と言うことになります。
9、貨車の記号
貨車は種類があまりに多く、
様々な記号があるのですが、
貨物列車の衰退、貨物列車のコンテナ化、保線車両の非貨車化などで、
今ある種類は殆ど以下の6種類だと言えます。
先ず、有蓋車です。
「有蓋」という言葉は、
殆どこの有蓋車でしか使わないのでなじみが無いと思いますが、
「ゆうがい」と読みます。
有蓋と言う漢字をバラすと、「蓋(ふた)が有る」、
つまり、蓋で覆われている(屋根が有る)車両を有蓋車と言います。
この貨車は、雨に濡れると困る物を輸送するときに使う車両です。
有蓋車の記号は「ワ」で、
語源は「wagon(ワゴン=荷車)」から来ています。
しかし、英和辞典で調べると、「wagon(またはtruck)」は無蓋(むがい)車を指し、
有蓋車は「van」になっています。
英語圏で有蓋車と無蓋車の話をするとき、
日本の車両記号で覚えてしまうと、間違った説明になってしまうので、
切り離して考えた方が良いです。
一方、屋根の無い貨車は無蓋車と呼ばれ、
雨に濡れても良い資材などを運ぶときに使います。
車両記号は「ト」で、語源は「truck(荷物運搬車)」から来ています。
なお、「truck」と言うと車の「トラック」を思い浮かべ、「トラック」と言ってしまうのですが、
日本の鉄道界では「トロッコ」と言っています。
(観光地で「●●トロッコ乗車体験」、「××トロッコ列車」などあるので、
ご存じの方も多いかと思いますが・・・。)
タンク車は石油や生コンなどを運ぶ貨車で、
記号は「タ」です。これはまんま「tank(タンク)」から来ています。
ホッパー車は鉱石や砕石を運ぶ貨車です。
ホッパー車は荷下ろし場に到着すると、荷台底部分の蓋を開くか、
一斉に荷台部分を傾かせて、
積載している物を下に下ろします。
記号は「ホ」でこれもまんま「hopper(ホッパー=漏斗状の入れ物)」から来ています。
コンテナ車は、台車と荷台(コンテナ)部分を分けた貨車です。
コンテナ車が普及する前は、有蓋車等の連結で貨物を輸送していたのですが、
荷物の行き先により、
操車場で貨車を付け替えるという作業(入れ替え)が必要になり、
作業が面倒な他、操車場という広大な敷地が必要でした。
コンテナ車の場合、コンテナ部分をクレーンなどで積み替えるだけで済むので、
作業の効率化と、貨物ターミナルの用地縮小が可能になりました。
また、コンテナごと車のトレーラーに積み替えられるので、
有蓋車のように荷物を一旦下ろしてから再びトレーラーに載せる必要はありません。
コンテナ車の記号は「コ」で、
これもまんま「container(コンテイナー=容器)」から来ています。
最後に長物(ながもの)車ですが、
この車両は木材やレールなど長いものを運ぶときに使います。
記号は「チ」で、
一見、「長物」を音読みした「チョウブツ」から来ているように見えるのですがそうではなく、
これは「timber(チンバー=ティンバー=木材)」から来ています。
〜〜〜〜〜
上記のそれぞれの貨車の種類の記号と、積載量記号を組み合わせて、
貨車の記号が成り立っています。
積載量記号は、14トン未満は無し、
14トン以上17トン未満は「ム」、17トン以上20トン未満は「ラ」、
20トン以上25トン未満は「サ」、25トン以上は「キ」になっています。
ここで、気になる方は「ムラサキ?色の紫??」と思ったと思います。
弊サイト作者も色々資料を調べたのですが、
語源は諸説あるようで、「使っていない記号を使ったら、たまたまそうなった」説や、
「決めた人が紫色が好みだった」説など色々出てきます。
10、その他貨車、事業用車両の記号
10−1、貨車の補助記号
貨車の補助記号は貨車記号の前に付ける補助的な記号で、
貨車記号より少し小さい文字で表記します。
記号 |
語源 |
用途、備考 |
ア |
アルミ |
アルミ製のタンク車の補助記号 |
オ |
大型 |
一定サイズ以上の貨車の補助記号 |
コ |
小型 |
一定サイズ以下の貨車の補助記号 |
ス |
スチール |
鉄製貨車の補助記号 |
テ |
天井 |
天井に氷室のある冷蔵車の補助記号 |
ナ |
無いの「な」 |
氷室の無い冷蔵車の補助記号 |
ハ |
パレット |
パレット用有蓋車の補助記号 |
ロ |
諸説あり |
一定速度以下の貨車の補助記号 |
ワ |
|
有蓋車兼用通風車の補助記号 |
10−2、その他貨車記号
以下の表は既に消滅した貨車記号などです。
まあ、普通に鉄道趣味している分には全く知る必要がありませんが、
過去の鉄道文献などで出てきた場合に参考にしてください。
貨車名 |
記号 |
語源 |
用途、備考 |
油槽車 |
ア |
油 |
油の輸送 |
豚積車 |
ウ |
諸説あり |
豚の輸送 |
家畜車 |
カ |
家畜 |
家畜(飼育牛など)の輸送 |
車運車 |
ク |
車 |
自動車、トレーラーの輸送 |
大物車 |
シ |
重量 |
大きな物の輸送 |
石炭車 |
セ |
石炭 |
石炭の輸送 |
通風車 |
ツ |
通風 |
側面に通風口の有る貨車 |
活魚車 |
ナ |
魚の「な」 |
魚の運搬 |
家禽車 |
パ |
poultry |
家禽(飼育鳥など)の輸送 |
陶器車 |
ポ |
pottery |
陶器の輸送 |
水運車 |
ミ |
水 |
水の輸送 |
車掌車 |
ヨ |
車掌の「よ」 |
車掌が乗務する |
土運車 |
リ |
砂利の「り」 |
土を運ぶ |
冷蔵車 |
レ |
冷蔵 |
生ものなどを運ぶ |
10−3、事業車両
鉄道の運行や保守などに使う事業用車両の記号です。
以下の表はJRのもので、その他民鉄は若干異なったり、
専用の記号があります。
貨車名 |
記号 |
語源 |
用途、備考 |
救援車 |
エ |
援の「え」 |
車両事故や災害時に救援する車両 |
除雪車 |
キ |
雪の「き」 |
除雪車両 |
検重車 |
ケ |
検重 |
鉄道施設の強度を検査するため、
錘を積んで重くした車両 |
操重車 |
ソ |
操重 |
クレーン車 |
暖房車 |
ヌ |
温もり |
|
控車 |
ヒ |
控え |
安全確認要員を乗せる車両 |
職用車 |
ヤ |
役所 |
検測車、訓練車、試験車など |
配給車 |
ル |
配るの「る」 |
鉄道部品を車両基地などへ運ぶ |
上の表から例えば「マヤ」の記号だった場合、
積車重量42.5トン以上47.5トン未満の職用車(検測車)だと言うことが分かります。
(積車重量記号は客車の所を参照)
鉄道・なぜなに教室トップへ
川柳五七の電車のページトップへ
たわたわのぺーじトップへ
|