地下構造物1
地下構造物は地図上では良くて地下鉄の路線と駅、
及び、地下道路の区間、
縮尺の大きい地図で一般地下通路や地下街とその出口が分かるくらいで、
大部分の地下構造物は分からず、謎のベールに包まれています。
中には私有地で関係者以外分からない地下空間や、
細かい地下施設や地下通路、
国家機密の地下施設も多々あります。
そのため、地図で地下構造物を知ることは困難なのですが、
地上地形の形状と、地下掘削工法を知れば、
地下構造物についてある程度理解することができます。
1、地下掘削工法
地下構造物を知るには、
地下構造物建設のための地下掘削工法を知ることが重要になります。
工法を知ることで、地上地形と地下構造の関連が分かり、
地図読図の一要因にもなります。
なお、この部分は弊サイト内の「鉄道・なぜなに教室」内の、
「電車の土木構造って何!?」と一部内容が重複しますが、
ご了承ください。
1−1、開削(かいさく)工法
開削工法は地上から地面を掘り下げ、
躯体を建設した後、
埋め戻す工法です。
比較的建設費が安くできる上、
工期も早くできるメリットはありますが、
地上部分に十分な用地が必要なこと、
工事規模が大規模になること、
地上部が道路の場合、
交通規制が入るデメリットもあります。
ただ、シールド工法のように地下構造物の設計上の制約がなく、
自由度が増す利点もあります。
この工法は水道管、ガス管の敷設から、
地下道路、地下鉄の建設まで幅広く使われる工法です。

開削工法は地下に向けて掘っていきます。
しかし、ただ掘っただけだと掘った面から土が崩れていってしまいます。
それを抑えるために、
土留壁(板)という板を、掘った面に当てて、
土が崩れるのを阻止します。
なお、土留壁は土に打ち込んだアンカで固定されることにより、
(静止)土圧で土留壁自体が倒壊することを防いでいます。
開削部分が広い工事現場では、
掘った部分縦方向に支持杭という柱を一定間隔で設置し、
それらを切梁(切梁は土留壁を押さえる役目もあります。)という梁で繋いで、
柱と梁の構造物を構築します。
それの上に路面覆工板を被せれば、
上部の道路を通行止めにすることなく工事を進めることができます。
それらが完成した後、
ヒューム(コンクリート)管やボックスカルバート、
大型地下構造物などの躯体敷設工事に入ります。
躯体完成後、支持杭、切梁、土留壁を撤去し、
掘った土を再び埋め戻すことで完成します。
昭和時代、開削工法は地震が起きても躯体が地盤とともに揺れるので、
強いとされていましたが、
これは間違いで、
埋め戻された土質と周囲の土質の違いで躯体にかかる圧力が変わり、
躯体が壊れやすいことが、
1995年の阪神淡路大震災で証明されました。
そのため、地盤状況によっては躯体を強度強化する必要があります。

開削工法で造られた地下構造物の特徴は、
地上の道路に沿って構造物が造られているということです。
(上の地図では地下鉄○×線の線路)
これは、同工法が道路に沿って造ることが最も有効な工法だからです。
道路に沿っていなくても、
地上に構造物のない場所(公園など)だったり、
開削工法で造った躯体と一体化して造られた建物のことが多いです。
(建物の地下部分)
1−2、シールド工法
シールド工法はシールドマシンという巨大カッターで地面を掘り進み、
それと同時にセグメントを組み立てて地下構造物外周を補強させる工法です。
地下構造物が多く介在していて、
より深い場所に造らなければならない地下構造物や、
地上に住宅などが密集している場合は、
この工法がよく使われます。
そのため、都市の地下鉄などで多くの路線が交差する区間は、
開通が新しい地下鉄ほどこの工法が採用される傾向があります。
その他、河床の下や海底の下に構造物を造る場合も、
この工法が採用されます。
(河床等が浅くて地盤が脆弱な場所や短い区間は
ケーソン工法や沈埋工法も使われます。)
この工法は地上の構造物に左右されず、
堅牢で地震に強く、
建設作業員を最小限で抑えられるなどの利点が多くある一方、
シールドマシンは1台/数億〜数十億円もの費用がかかり、
動かすにもものすごいエネルギーがいるので、
電気代などのエネルギー代もかなりかかります。
また、地下構造物の形状に合わせてシールドマシンのカッター、
場合に寄ってはシールドマシン自体を変えながら掘り進めなければならないので、
効率も良くなく、構造の自由も利かない欠点もあります。
(形状の違いが2区間くらいなら親子シールドカッターで対応可能。)
更にある欠点が、
シールドマシンの掘削速度で、
現在は技術革新でスピードアップしたとはいえ、
1日10メートルが限界とされています。
(昔は1〜2メートルが限界だった。)
そのため、2qの長さの地下構造物を建設するのに、
休工日などを考慮しなくても200日かかる計算になります。

シールド工法はシールドマシンの先端に取り付けられた
シールドカッターで切羽面を掘り進めていきます。
シールドカッターで掘り進めやすくするため、
地上の給水設備から水が送られていて、
切羽面を水で柔らかくしながら掘ります。
掘った土は排水ともに排泥管で地上の泥水処理施設に送られます。
一方、シールドマシンの後ろにあるエレクターで、
セグメント(円弧状のコンクリートブロック)を組み立てて、
掘削面外周をセグメントで覆い強化させます。
シールドマシンの推進は、
シールドマシンと一番新しく設置したセグメントの間の、
シールドジャッキの緊縮で行います。
このような工法なため、
シールド工法は地上構造物には左右されないのですが、
一定間隔で給水設備、泥水処理施設などの地上設備が必要で、
セグメントなどの部材や機材を搬入するための立坑が必要です。
そのため、設計の段階であらかじめこれらが設けられる
区間設定が必要だといえます。

シールド工法で造られた地下構造物は必ずしも道路に沿ってなく、
一般住宅地を横断している個所も多々あります。
また、所々立坑や地上設備が設けられていたと推定できる公園等が、
地下構造物の経路途中にあります。
これが水道設備や電力設備などの場合、
点検、保守用の作業員用坑口として残されている場合もあります。
2、山岳トンネル掘削工法
開削工法やシールド工法とは異なり、
ここからは山岳トンネル掘削工法になります。
基本、山岳トンネルを掘削する際に使われる工法なのですが、
開削工法でもシールド工法でも不適切な所で地下構造物を造る際、
この工法が使われることがあります。
2−1、矢板工法
昔、トンネルは岩盤を直接くり抜いただけの素掘りでした。
しかし、それだと経年劣化で崩落する危険性があります。
中にはモルタルを吹き付けて強化している所もありますが、
壁面が凸凹していて通行に支障が出るし、
トンネルに荷重がかかりやすい坑口はこれでも強度が弱く、
やはり崩落の可能性があります。
また、地盤が軟弱な場所では素掘りが一切使えません。
これに変わって出てきた基本的トンネル掘削工法が矢板工法です。
矢板工法は矢板と支保工で掘削面内側を支えることにより、
荷重に耐えられるようにしたトンネル工法です。

矢板工法は馬蹄形に穴を掘り抜き、
その堀面にそって矢板という木または鉄製の板を並べていきます。
それを馬蹄形の支保工というH鋼で押さえつけます。
そうしたらその内側に覆工コンクリートを打設することでトンネルが完成します。
矢板工法で造ったトンネル等は、
覆工コンクリートの面に矢板の線がくっきり浮かぶので直ぐに分かります。
2−2、NATM(ナトム)工法
NATM工法は矢板工法に代わって出てきた工法です。
NATMとは、New Austria Tunneling Methodの略で、
New(新しい)Austria(オーストリアの)Tunneling(トンネルを造る)Method(方法)から、
日本語では「新オーストリア工法」と言われています。
今までの矢板工法は、
矢板と支保工でトンネルにかかる荷重を支えていたのですが、
NATM工法は支保工や吹付コンクリートにロックボルトを打ち込み、
それらを締め付けて強化することにより、
トンネルにかかる荷重を支えています。

NATM工法は半円形にトンネルを掘った後、
鋼製支保工で掘った面を覆います。
その内側に吹付コンクリートでコンクリートを吹き付けた後、
ロックボルトというボルトを岩盤方向に打ち込みます。
このロックボルトが支保工と吹付コンクリートを締め付けることにより、
トンネルの強度が図られます。
最後に吹付コンクリートの更に内側に、
覆工コンクリートを打設することでトンネル等が完成します。
矢板工法に比べると、
矢板を並べて支保工を組み立てる必要がなく、
壁面剥落や破断による崩壊や漏水などのリスクが少なく、
口径の大きいトンネルが掘削できるため、
新しいトンネル等はこの工法が一般的に使われています。
NATM工法の覆工コンクリートは矢板工法のような矢板の線はなく、
壁面がのっぺりとしているのが特徴です。

矢板工法やNATM工法で造られる地下構造物は、
地上面が山だったり丘陵だったりする場合が多いです。
(上の地図では地下鉄■×線の線路)
地下鉄等で一部分が山岳区間にかかる場合、
開削工法やシールド工法の躯体に接続する形で、
山岳トンネル掘削工法トンネルが採用されます。
★補足★
1)、地下鉄の場合、駅が所々設けられるのですが、
シールド工法の場合は大きなシールドカッターにしたり、
三連型マルチフェイスシールドカッターなどが使われます。
NATM工法もトンネル幅を部分的に拡げれば駅の設置が可能で、
横浜市営地下鉄ブルーラインの一部駅で採用されています。
2)、何れの工法でも地盤が軟弱な場合は、
薬剤を注入して地盤を凍結させてから掘削する場合があります。
2、共同溝
共同溝は水道、下水道、電気、
ガスなどのライフライン地下構造物を一体化した地下構造物です。
共同溝の敷設には大規模な開削工法やシールド工法が必要になり、
建設コストがかかるのですが、
それぞれバラバラに行っていた建設工事が1回で済むだけでなく、
メンテナンスなどの作業通路も共用でき、
地下空間を有効に活用することができます。
シールド工法などで造られているため、
地震などの災害に強い反面、
どこかひとつのライフラインでトラブルが起こった場合、
他のライフラインにも影響が出る可能性があるという弱点もあります。

共同溝は一つのトンネル(躯体)に水道、下水道、電気、通信、
ガスなどのライフラインがまとまって通っています。
共同溝における各ライフラインの配置は場所によって異なるのですが、
水は電気を通すこと、
ガスが漏れた場合、電気などで引火する危険性があること、
下水道管内で発生する硫化水素の問題、
上水道などの飲み水を流す管と、
ゴミ収集管や下水道などの汚物を流す管との兼ね合いなどを
考慮する必要があります。
ただ、共同溝でなくても基本的には上水道は下水道の上に敷設し、
ガス管を通る都市ガスは空気より軽いため、
ガス漏れ時に素早く空気中に放出できるよう、
上層部に敷設することが多いです。
また、上水道の漏水により電気配電線、送電線、通信線が水分を帯び、
漏電事故を起こす可能性があるため、
基本的には上水道管より電気関係を上に敷設します。
各ライフラインの内、
下水道管が基本的に一番口径が大きいのですが、
これは、水とともに汚物が流れることと、
硫化水素などのガスが発生するためです。
硫化水素は低酸素の中で微生物が有機物を分解する際に発生するもので、
硫化水素の気圧上昇により下水道管を破裂させたり、
ヒューム(コンクリート)管の鉄筋を腐食させたりします。
後者の被害で言えば、
2025年に起きた埼玉県八潮市の道路陥没事故が有名です。
この事故は長期間にわたり下水道内で発生した硫化水素により、
コンクリート下水道管内の鉄筋を腐食させてしまいました。
鉄筋が腐食したコンクリート下水道管は強度劣化を起こして破壊が生じ、
破壊個所から上層の土砂が下水道管内に大量に落ち込んで
大規模な陥没が起きました。
3、地下街・地下通路
地下街は戦前からちらほら建設されていて、
1931年建設の神田須田町地下鉄ストア(現在は閉鎖)などがありました。
戦後は浅草地下街、渋谷地下街(しぶちか)などができ、
1973年には大規模な新宿地下街「サブナード」などが完成し、
その後、各主要都市で大規模地下街が造られるようになりました。
特に名古屋市は大規模地下街が発達していて、
名古屋駅西口から久屋大通駅までの約3q弱が地下街になっています。
地下街とアーケード商店街は相関関係があるようで、
アーケード商店街が多い地域は地下街も多く、
アーケード商店街が少ない地域は地下街も少ない傾向があります。
そのため、地下街もアーケード商店街と同様、
東日本より西日本の方が多くなっていますし、
人口が日本で第5位の県の埼玉県はアーケード商店街が殆どなければ、
地下街は全く無いという状況になっています。
(その代わり郊外型の大型ショッピングモールは多い)

地上の商店街は古くからのラーメン屋、八百屋から、
テナントの出入りが頻繁にある雑居ビルまで、
雑多な店舗形態がありますが、
地下街は基本的に地下街全体を管理している企業体があります。
そのため、店舗はすべてテナントとして入ることになります。
地下街は大体一等地の地下にあるためテナント料が高く、
売り上げの悪い店舗はすぐ撤退することになります。
そのため、必然的に店舗の構成は、
流行最先端のファッションブランド店や、
店舗拡大をしている飲食店など、
時代の最先端の店が並ぶことになります。
その代わり、テナントの入れ替わりは非常に早く、
数年行かないだけで、
店の構成が大きく変わって戸惑ってしまう地下街も多いです。
一方、地下街の管理会社は管理会社で、
定期的に地下街の修繕、補修、
リニューアルなどのメンテナンスを行ったりして
魅力的な地下街に常にしておかないと、
訪れる客が減っていき、
次第に店舗が歯抜け状態、
つまり、シャッター街化していきます。
そのままシャッター街化した地下街を放っておくと、
神田須田町地下鉄ストアのように店舗が0になってしまい、
ゆくゆくは閉鎖になってしまいます。
地下街の出入口は色々なパターンがあります。
基本的に地下街は開削工法で造られているため、
地上に並行して通っている道路に直接出入りできる出入口が多く、
他にもビル(主に雑居ビルやオフィスビル)の1階に階段等で繋がっている出入口、
ビルの地下階(地下街と同じ深さの階数)に直接繋がっている出入口があります。
これらは地上出口用地が確保できなかったという理由もあるのですが、
「地下街利用客がビルのテナントにもついでに利用して貰える」
という相乗効果期待の目的もあります。
また、上と似たもので、
ビルと地下街が一体化していて(つまり、ビルの地下階扱い)、
普通にビルのエスカレータやエレベータで1階に行けば
出入りできるものなどがあります。
地下街は一見、地上商店街を地下化したように見えますが、
実際は一体化した建物の扱いになります。
そのため、スプリンクラーや防火シャッターなどの防火設置が必要になります。

また、地上の雨水などが地下に流れ込まないように、
入口部分に段差を設けたり、
防水シャッターを設けたりします。
★補足★
1)、トンネル(地下構造物内)冷房ですが、
地下街は基本的に冷房が完備されているところが殆どで、
冷気が外部に漏れないよう、
冷房完備区間と非完備区間の地下通路の間に扉を設ける場合が多いです。
2)、一方、昔の地下鉄はトンネル全体に冷房をして、
電車内では冷房をしていませんでした。
(冷房車も地下鉄内は冷房を切っていました。)
これは、車両冷房の室外機から出る排熱と、
車両床面に当時あった抵抗器から出る熱で、
トンネル内が高温になるのを防止するためでした。
今は省エネの冷房になったことと、
地球温暖化で冷房をつけないで耐えるのは厳しくなったこと、
省エネ電車の普及により、
床面の抵抗器が無くなったため、
現在は電車内冷房が一般的になっています。
4、防空壕・核シェルター
戦争などの有事になった際、
敵軍からの攻撃を避けるため、
防空壕や核シェルターが設けられます。
防空壕は主にミサイルを避ける目的で造られた、
地下施設ですが、
核兵器が増えてきた昨今、
従来の防空壕では核兵器が爆発する瞬間の超高温に耐えられませんし、
放射性物質などから発せられる放射線被害を避けることはできません。
それを避ける目的で造られるのが核シェルターです。

防空壕はただ素掘りで掘った穴などが多いのですが、
核シェルターはちゃんとした躯体を造り、
入口面はしっかりした開閉式蓋を設けます。
核兵器が使われた場合、
当面は地上に出られないため、
最低限の生活空間が設けられ、
食料、薬、日用品などが常備されています。
核シェルターは個人家族用から、
多くの住民が避難できるような大規模なものまで様々です。
日本においては1945年までは戦争が行われていたため、
今でも所々に防空壕の跡が見られます。
ただ、これも大規模開発などで徐々に数を減らしていますし、
崩落の危険性から立ち入り禁止になっているところも多いです。
(既に崩落してしまったところも多い。)
核シェルターに関しては、
個人で設けている所は兎も角、
2026年現在、
国としてはまだ公式に建設はしていないとされています。
しかし、世界の各地で戦争が起こっている昨今、
「全く整備しない」という訳にはいかないので、
将来的には国内各地で建設されると思われます。
ただ、
勿論、使わないで済むことに越したことはないのは言うまでもありません。
地下構造物2では地下鉄駅構造&地下電車庫、
地下道路構造&地下駐車場、地中送電、
マンホール、採石ベルトコンベアを解説します。
こう、ご期待下さい。
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