人工地形
人工地形は文字通り人間が造った地形です。
生物の営みが結果として地形を形成することはあり、
わかりやすい例で言えば刺胞動物のサンゴによるサンゴ礁がそれに当たります。
しかし、あくまでもそれは結果としてであり、
意思を持って地形を造ることが出来るのは人間だけです。
主に人間が地形を形成する理由は、
住みやすさ、農作物の栽培のしやすさなどの追求で、
土木工学を用いて安全確実な工事によって形成します。
1、盛土
盛土はその字の通り、土を盛った人工地形を言います。
盛土は斜面で平地を確保する場合や、
谷間区間における道路交通の勾配緩和、
高速道路や新幹線などの交通機関の立体化に採用されることがあります。
交通機関の立体化や谷間区間の勾配緩和目的に盛土をすることがあります。
基本は台形状に土を盛り、
側面を覆土や擁壁で保護します。
覆土の場合、それだけだと雨水で覆土や盛土が流れたり、
崩れやすくなるため、
草木を植えて補強することがあります。
立体化は盛土でなくても高架橋でも出来るのですが、
切土で土砂が出た場合は高架橋より安価に建設出来るため、
盛土が採用されます。
逆に都市部など切土で出た土が確保出来ない場合は高架橋になります。
斜面に平地を確保するために盛土をする場合は、
擁壁を作り、
その擁壁と斜面の間に土砂を埋め立て、
平らに整地します。
なお、擁壁を設けると埋め立て部分に雨が降った場合、
排水が出来ず、地盤沈下や土砂流出、擁壁の破壊が起きてしまうため、
擁壁の所々に水を逃がすための水抜き穴を設けます。
2、切土(切通し)
切土とは地盤を掘り下げたり、
斜面を切り取って平地を確保することを言い、
盛土とは対称関係にあります。
切土で出た土砂で盛土を造るのが一般的で、
無駄な土砂が出たり、土砂が不足しないよう、
切土の量と盛土の量が一致するような建設設計が求められています。
なお、道を通すため、丘を部分的に切り取ったものを切通しと言います。
道路建設において、途中で土地の高い所があるが、
その高低差のある斜面に沿って道路を造ると勾配が急になる場合、
土地を切土で掘り下げ、勾配を緩和させることがあります。
切土で掘り下げた両面を法(のり)面と言い、
張りブロックやコンクリート法枠フレーム、
モルタル吹きつけなどで強化して、
法面が崩れ落ちないようにします。
斜面の場合、
掘削をして平地を確保します。
そうすると、今までの斜面より角度の急な法面が出来てしまうため、
張りブロック、擁壁ブロックなどで補強します。
また、盛土の擁壁同様、
水抜き穴を設けます。
これは、崩壊地形で述べた地滑りを防止するためで、
水抜き穴が無いと斜面に水が溜まってしまい、
擁壁ごと崩落してしまうからです。
ニュータウンなどの新興住宅地は半分切土、半分盛土にして、
切土と盛土の量が一致するようにしています。
3、埋立地
埋立地は河川や海、湖など、
水部地形により、人間が住んだり、
作物を作ることが出来ない場所を土砂等で埋め立てて、
陸地化することを言います。
陸地には限りがあり、狭い地域に多くの人が住んでいる場合、
土地が不足してしまいます。
それを解決する手段として、
埋立地という方法が採られます。
比較的浅い水部地形で行われることが多く、
大都市周辺での海では広大な埋立地が造られることが多いです。
その一方、埋め立てた地面の底部に水が溜まりやすく、
地震などで土砂と水が混ざり合うと、
地盤沈下を起こしやすくなる欠点があります。
埋立地は海などの水部地形に堤防を建設します。
その堤防から陸地側の水をポンプ等で排水し、
底部が現れたら、土砂等を投入し、埋め立てます。
土砂等と「等」を入れたのは、土砂以外のもので埋め立てることもあり、
昭和時代には未焼却のゴミで埋め立てていたところもあります。
<夢の島(現・新木場)、新夢の島(現・若洲)など>
これはゴミの量が高度経済成長で増えて
処理しきれなくなったための応急処置だったのですが、
悪臭や害虫、害獣の発生、水質悪化、
ウイルスや細菌発生などの環境汚染問題が出たため、
焼却ゴミでの埋め立てが主流になりました。
しかし、その後、ダイオキシン問題が出たため、
現在の埋め立ては土砂が主流になっています。
川などの埋め立ては、
狭い谷の小さな沢を埋め立てることが多く、
排水は土管にして、
その上に土砂等を被せて埋め立てます。
これにより、急峻な谷の地形にも平地を確保出来るのですが、
排水対策が不十分だと埋め立て土砂が豪雨などで流れ出し、
土石流となって下流に流れて下流域に甚大な被害を出すことがあります。
そのため、埋め立て行為をするには、
県条例などにより県の許可が必要な場合が殆どです。
一部悪質業者により、
産業廃棄物が混ざった土砂で埋め立てられる場合もあり、
水質汚染などの環境汚染や、
崩落による道路寸断など、周辺の地域への被害が出ているところもあります。
4、干拓地
干拓地は埋立地に似ているのですが、
土砂等で埋め立てる埋立地に対し、
干拓地は土砂で埋め立てず、土地の乾燥化だけで陸地化させる方法です。
さほど水深がなく、時間帯によっては水が干上がる干潟や、
湿地帯、湿原を陸地化するときに使う方法です。
湿地帯の水を排水して乾燥化させる方法は色々あります。
ジメジメとした湿地帯で人が住めるような場所では無かった江戸(現・東京)を、
徳川家康が開拓するときに使った方法は、
湿地帯より深い水路や河川を縦横無尽に造り、
その水路、河川に水が流れるようにして、
排水させるという方法でした。
オランダでは風車と繋がった水車で水を海に掻き出して排水し、
陸地化させる方法を使っていました。
一般的には堤防を造り、
水を遮断して干拓部分の水を排水して乾燥化させ、
陸地化をします。
湿地帯なら、排水は排水機(ポンプ)場を造って排水させる方法がとられます。
しかし、干潟など海水面だったところを干拓した場合、
ただ海水を排水しただけでは表層面に塩が残ってしまい、
風などが吹くとその塩が舞い上がって塩害が出てしまいます。
そのため、潮受堤防と水門を設置し、
満潮時は海水が流入しないよう水門を閉じて、
上流から流れる河川の真水を溜めます。
干潮時になったら、水門を開けてその溜めた水を排水して、
塩を徐々に洗い流します。
その作業を長い時間かけて行うため、
元々海水だった所の干拓地が使えるようになるためには、
長い時間が必要になります。
5、人工地盤
人工地盤は建築構造物により人為的に地盤を造ることです。
都市部など土地が少ない場所で、
広大な用地が必要な駐車場、浄水場などを造ると、
用地がそれらに使われてしまい、
土地の有効活用が出来ないため、
人工地盤を造り、それらの土地の上空を有効活用できるようにしています。
人工地盤と言っても、盛土のように土砂を盛るのでは無く、
天井と梁、柱のある構造物を造ります。
その構造物の下には広大な土地が必要な、
駐車場、浄水場、下水処理場、変電所、電車庫などを造り、
構造物の上には公園やマンション、スポーツ施設、駐車場などを造り、
土地を多層化させます。
高度経済成長期から人工地盤は増え、
今は都営大江戸線の木場車庫など、大規模な人工地盤も造られています。
問題は地盤の老朽化で、
人工地盤は構造物なので、時間が経つにつれ亀裂や剥離、
鉄筋の腐食が進んでいきます。
補修で長持ちさせることは出来るのですが、
その際、上または下または両方の施設や建物が使えなくなります。
まだ公園などは一時的な閉鎖で済むのですが、
マンションなどを建設してしまった場合、
そのマンションの住民に影響が出る可能性があります。
また、人工地盤の上の構造物で一番問題になるのがマンションで、
人工地盤の土台がまだ使えても
マンションが時間の経過で時代にそぐわない住環境になってしまう可能性があります。
人工地盤の上にあるマンションは安易に建て替えが出来ないため、
都営三田線車庫上の人工地盤にある都営西台アパートなど、
老朽化と施設の陳腐化で、
だんだん住民の高齢化や空き家化が進んでいるマンションもあります。
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